2025年産の新米が市場に出回り始めました。
しかし、東京を含む関東圏のスーパーでは、一般的なコシヒカリ5kgでさえ、2024年産米の販売時期と比べて高い価格で販売されています。
ブランド米や特別銘柄に至っては、1.5倍以上に跳ね上がった例も報告されています。
この事実は、「小泉農水大臣による備蓄米の大量放出」という政策対応と矛盾しているように見えます。
供給を増やせば価格は抑制されるはずなのに、なぜ値上がりが起きているのでしょうか。
考えられる理由は三つです。
第一に、生産コストの高騰です。
肥料・燃料・輸送コストが軒並み上昇し、農家はこれを価格に転嫁せざるを得ませんでした。
第二に、2025年夏の猛暑と水不足による収量減と品質低下です。
今年の登熟期に高温が続いたことで1等米比率が下がり、良質米にプレミアム価格がつきやすくなったのです。
第三に、概算金の引き上げです。
JAが農家に支払う先渡し金が、前年(2024年産米)に比べて大幅に増額されたことが、実勢価格を押し上げる要因となりました。
これらの要因は、備蓄米放出による「供給増」の効果を上回ったことにあり、結果として消費者価格の上昇を招きました。
確かに、備蓄米放出は消費者価格の急騰を一時的には抑えたものの、放出は同時に農家の収益性を圧迫し、将来の危機対応余力を損いました。
本来、備蓄米は不作や災害に備える戦略的資源であり、価格対策に使い過ぎれば本末転倒です。
首都直下地震や南海トラフ巨大地震、富士山噴火といった自然災害リスクが高まる中でなおさらです。
すなわち、小泉大臣による備蓄米大量放出は、消費者価格を一定程度抑える効果をもたらしたものの、農家の持続性や国家的な危機管理の観点からは疑問が残ります。
いま政府に求められている米対策は明らかです。
「減反政策の完全廃止」「農家への価格もしくは所得の補償」「玄米備蓄から籾米備蓄への転換」、この三点を実行することこそ米政策のあるべき姿であると断じます。