2025年7月30日午前8時25分、ロシア極東・カムチャツカ半島沖でマグニチュード8.8という巨大地震が発生しました。
震源の深さはおよそ20.7km。これは、2010年チリ地震や1906年エクアドル・コロンビア地震と並び、観測史上6番目の規模となります。
震源からおよそ350km南西に位置する千島列島のセヴェロクリリスクでは津波が街を襲い、水産加工施設が壊滅的被害を受けました。
ロシア国営メディアが伝えた映像では、濁流が住宅街を呑み込み、車や建物が水に浸かる様子が克明に映し出されています。
この影響を受け、日本の気象庁は、北海道から和歌山県にかけて、津波警報および津波注意報を広範囲に発令しました。
実際、国内各地で津波が観測されており、岩手県久慈港では1.3メートルという大きな津波が記録されました。
これは2024年元日に発生した能登半島地震以来、国内で1mを超える津波が観測された初めてのケースで、太平洋側の広範囲にわたり、0.2〜0.6mの津波が観測されています。
いつも言うように、我が国は、地震、津波、火山、台風、豪雪、あらゆる自然災害の交差点にある国です。
国土面積こそ世界の0.25%に過ぎませんが、世界のM6以上の地震の約2割が日本周辺で発生しているのです。
その理由は明快で、日本列島は太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートの4枚のプレートがぶつかる「地殻の継ぎ目」の上に乗っているからです。
さらに、国土の7割が山地であり、河川も多く、土砂災害のリスクは常に存在します。
地震で緩んだ地盤に豪雨が重なれば、たちまち土砂崩れや洪水が起きます。
そして今、最も切迫しているのが、南海トラフ巨大地震と首都直下型地震です。
ある地震学者はこう警鐘を鳴らします。
「南海トラフ地震の周期はおおむね100年。前回の発生からすでに72年が経過し、プレートのひずみは臨界点に近づいている。近畿地方で地震が頻発するようになると、南海トラフ地震の“前兆”とも言える状態だ。」
南海トラフ地震は、30年以内に70~80%の確率で発生すると言われています。
もはや「もし起きるか」ではなく、「いつ起きるか」の段階にあります。
「最悪の事態を想定し、備える」
これこそが、安全保障の本質です。
自然災害は、私たち日本人にとっての「最大の有事」です。
にもかかわらず、国土強靭化、防災インフラ整備、都市機能の分散、第二国土軸(日本海側)の構築など、最低限の安全保障政策すら十全に進んでいるとは言い難いのが現状です。
政府は今こそ、支出を惜しまず、徹底した防災・減災投資を断行すべきです。
それは「税金の無駄遣い」ではなく、「未来の命を守る最前線」なのです。
この程度の政策すら断行できないのであれば、政府の存在意義は根底から問われるべきでしょう。
時間は、もはやそれほど残されていません。
今この瞬間も、プレートはきしみ、地球は静かに、しかし確実に「警告」を発しているのです。