麻生総合病院における個人情報不正使用事件と川崎市の対応について

麻生総合病院における個人情報不正使用事件と川崎市の対応について

令和7年7月5日のブログでもご報告しましたが、川崎市麻生区の『麻生総合病院』において、同院勤務の看護師が入院患者のクレジットカード情報を無断で撮影・不正使用し、インターネットで約200万円を詐取したとして、警視庁に逮捕されました。

報道によれば、被害者はすでに亡くなられている80代の男性患者とのことで、当該事件は個人情報の不正取得にとどまらず、医療従事者による著しく悪質な背信行為として衝撃を与えました。

ただ、本件には多くの疑問が残ります。

たとえば、80歳という高齢で、かつ重篤であった可能性のある患者が、なぜクレジットカードを病室に所持していたのか、なぜ当該看護師はクレジットカードの在り処を知り得たのか、なぜパスワード入力なしに多額の不正利用が可能であったのかなどの点です。

通常、医療機関は入院に際し、クレジットカードや大金などの貴重品を所持させることを拒みます。

むろん、院内盗難を回避するためです。

にもかかわらず、なぜ今回このような深刻な事態が起きてしまったのでしょうか。

そこで、麻生総合病院の公式サイトを確認してみますと、同院では入院費の支払い方法として「現金またはクレジットカード一括払い」が可能であると明記されていました。

さらに厚生労働省の医療機関情報を確認すると、同院には「保証金制度」の記載がありました。

保証金制度とは、医療費の未払いに備え、入院に際して病院側が患者から一時的に金銭を預かる制度のことです。

これらの情報から、医療機関が患者のクレジットカード情報を一定程度管理していた可能性が否定できません。

もしもそうであるならば、本件は看護師の単独犯という話では済まされず、施設側の情報管理体制に重大な問題があったと考えられます。

今回、犯行が発覚したのは、被害者にご遺族がいたためですが、もしも身寄りがなければ、事件は発覚せず、さらに同様の被害が繰り返されていた可能性は否定できません。

あらためて言うまでもなく医療機関においては、患者の生命・身体のみならず、尊厳や私的情報の保護にも高度な倫理性と管理体制が求められます。

このことは医療法にも謳われています。

すなわち、本事案は、医療機関の情報管理体制、ガバナンス、及びコンプライアンスの脆弱性を如実に示すものであり、市民の医療機関に対する信頼を著しく損なう極めて深刻な事態であると受け止めるべきです。

そこで私は、以上の観点から、昨日(令和7年7月7日)、川崎市の地域医療を所管する川崎市健康福祉局に対し、以下の事項について、医療法第25条および第6条の7に基づく監督措置の実施を要請いたしました。

1.麻生総合病院に対し、医療法第25条に基づく立入検査を速やかに実施し、入院保証金や与信確保の実態を含め、医療法第6条の7の趣旨に則った個人情報保護体制についての調査・確認を至急行うこと。

2.本件に関する麻生総合病院の個人情報保護に関する監督責任の有無および再発防止策の有無について調査すること。

3.市内の入院機能を有する全医療機関に対し、入院保証金や与信確保等を目的として患者がクレジットカードを持参するケースの実態を把握し、貴重品の管理と情報保護体制の再点検を促すこと。

4.その他、医療機関における個人情報保護および職員倫理に関するマニュアル整備を含め、指導・助言の徹底を図ること。

上記、要請に対し当局は、「内容を精査し、検討させていただきたい」とのことでした。

本件は一医療機関の問題にとどまらず、市内すべての医療機関に共通する教訓を含んでいます。

市民の生命と尊厳を守るため、今こそ、医療現場のガバナンスと倫理意識の再点検が求められています。

今後も議会を通じて、実効性のある是正措置が講じられるよう、全力を尽くしてまいります。