令和7年6月19日の川崎市議会(自治法99条に基づく意見書案の提案)において、私は「現行憲法(いわゆる占領憲法)は憲法として無効であり、帝国憲法下の講和条約の範囲内において暫定的に効力を有しているにすぎない」との憲法論を提起しました。
この主張は、単なる理論ではなく、我が国の主権を回復し、真の国家としての姿を取り戻すための前提条件であり、緊急の課題でもあります。
とりわけ問題なのは、占領憲法第98条の存在です。
同条は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定め、日本国憲法に基づく国内法よりも条約の方が優位に立つ構造を生み出しています。
このことは、我が国が外国、特に米国との条約において常に不利な立場に置かれ、国家としての主体性が著しく損なわれているという現実の根拠になっています。
すなわち、我が国が主権国家として独立していないという現実を、最も象徴的に示しているのがこの占領憲法98条なのです。
たとえば、現在の深刻な米騒動や食料問題もまた、こうした憲法体制の歪みに起因しています。
昭和29年(1954年)、米国との間で締結されたMSA協定(相互安全保障援助協定)は、日本に対して食糧自給率を下げる方向の農業政策を強制し、結果として減反政策が強力に推進されました。
その後も種子法の廃止や種苗法の改悪といった政策が相次ぎ、我が国の農業は骨抜きにされ、食糧安全保障は極度に脆弱化しています。
これらの流れは、占領憲法98条が条約の優位性を正当化してきた結果であることは明白です。
このように、日本が外国との条約に従属させられる構造を改めない限り、いくら個別の農政に抗議したところで、根本的な回復には至りません。
占領憲法98条の存在を許容するかぎり、日本は今後も不平等な国際協定を受け入れ続け、国家主権の回復は不可能なのです。
日米地位協定もまた、その一例にほかなりません。
だからこそ、今必要なのは、占領憲法を憲法として無効と断じ、帝国憲法の正統な手続きに則った改正を行い、憲法秩序を根本から再構築することなのです。
このことは、外国人による土地購入問題にも如実に表れています。
平成7年(1995年)に発効したGATS協定(サービスの貿易に関する一般協定)によって、日本は外国人に対して土地取得の自由を事実上認めてしまいました。
GATS協定では「不動産取引」もサービスの一部として扱われるため、外国人による土地取得の自由が国際的に保障されやすくなっているわけですが、我が国は、加盟時に外国資本による土地取得を規制する留保条項を設けなかったため、安全保障に関わる重要な土地が敵性国家の国民や法人によって容易に買収されています。
そして、このような土地取引を違憲であると主張し、司法の場で争うことすら極めて困難であるのはまさに占領憲法98条が条約の優位を定めているからです。
かつて大正15年に施行された「外国人土地法施行令」は、外国人による土地取得を安全保障上の観点から制限していました。
しかし、この制度も、GHQの命令により1945年に廃止されるという屈辱を強いられたのです。
ちなみに米国などは、条約締結にあたって「条約よりも国内法が優先する」という確立された国内法制度を有しています。
つまり米国では、条約が自動的に国内法とならない“Self-executing(自己執行)”条約原則が採られており、議会による国内法化を前提としています。
これにより、米国は自国法との整合性を確保しつつ条約を実施できる仕組みを整えています。
対して日本は、占領憲法98条のもとで条約が国内法を上回る仕組みになっているため、米国との条約は常に不平等なものとなり、日本にとって一方的に不利な内容で締結されています。
この構造的不利益は、占領憲法の下で主権を回復できていないことの帰結であると言えます。
なお、ここで明確にしておきたいのは、私が提起しているのは「憲法無効論」であり、いわゆる「憲法無視論」ではありません。
現行憲法は制定過程において法的正統性を欠いているが、一定の講和秩序の下で事実上機能しているという法哲学的立場に立っています。
このような立場に基づく限り、現行制度のもとで議員として活動することと、憲法論を提起することは何ら矛盾するものではありません。
憲法尊重義務を負うことと、憲法に対する学術的あるいは政治的批判を行うことは明確に区別されるべきです。
憲法の成立過程や内容について異論を述べることは、学問の自由・言論の自由の範疇にあり、民主主義社会において当然認められるべき行為です。
一方、現在行われている参議院議員選挙において、一部の政党が「改憲ではなく創憲を目指す」と主張していますが、これもまた国民を欺く表現にほかなりません。
その創憲の手続きが占領憲法に基づくものであるならば、“創憲”なる用語は単なる政治的スローガンであり、その実体は、結局のところ占領憲法に基づく改憲手続きと何ら変わりません。
このような詭弁に、国民が惑わされることがあってはならないのです。
以上のとおり、もはや個別政策への対応だけでは限界があります。
我が国の農業政策、土地政策、さらには国家主権にかかわるあらゆる問題の根本にあるのは、占領憲法98条という構造的欠陥です。
ゆえに、占領憲法の無効を宣言し、正統な憲法秩序を回復することこそが、我が国の独立と再生に向けた最も本質的な一歩なのです。