危機を想定した「医療計画」を!

危機を想定した「医療計画」を!

全国47の都道府県は、各域内の実情に応じた医療提供体制の確保を図るための計画をもっています。

それが、いわゆる「医療計画」です。

因みに、川崎市のような政令指定都市もまた独自の医療計画をもっています。

これら「医療計画」は厚生労働大臣が定める方針に即して定められ、少なくとも5年ごとに評価や検討を行った上で必要に応じて変更されています。

医療計画には概ねどのようなことが記載されているのかは以下のとおりです。

まず第一に、いわゆる5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)に関する事項。

第二に、いわゆる5事業(救急医療、災害時医療、僻地医療、周産期医療、小児医療)に関する事項。

第三に、5疾病・5事業及び在宅医療に係る医療連携体制に関する事項。

第四に、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、その他の医療従事者の確保に関する事項。

第五に、医療の安全の確保に関す事項。

第六に、病床整備及び基準病床数に関する事項。

第七に、地域医療支援病院の整備の目標、その他医療機能を考慮した医療提供施設の整備の目標に関する事項。

…と言ったところです。

それから「医療計画」のほか、医療法第30条に基づき「地域医療構想会議」という協議機関が各都道府県に設けられています。

地域医療構会議では主として地域の病院や有床診療所が担うべき病床機能に関することが協議されています。

「担うべき病床機能」なんて言われると、いかにも崇高な理念のもとに協議されているようにも錯覚しそうですが、まったく違います。

現実は、「いかに病床を減らし」「いかに少ない病床を機能的に運用していくか」の議論が為されています。

むろん、病床削減を求めているのは財務省であり厚労省です。

とりわけ財務省は医療財政を縮小したくてたまらない。

厚労省は2019年9月に、「再編統合へむけ議論が必要」とする全国の公立・公的病院を公表しましたが、川崎市内では市立井田病院(中原区)が名指し対象にされました。

再編統合の議論が必要な理由は「近隣の民間病院と病床機能が重複しているから…」というものでした。

厚労省によると「近隣」とは、車で移動して20分程度のところなのだそうです。

要するに「車で20分程度のところにある民間病院と重複してるのは無駄だから病床を削れ」と言うわけです。

しかしながら今回のコロナ・パンデミックにより、市立井田病院はコロナ患者を受け入れています。

即ち、厚労省の言う「重複(無駄)病床」の重要性が認識されたのです。

平時の余力こそが、有事(危機時)にものを言います。

残念ながら、というより実に恐ろしいことではありますが、各都道府県や政令市が定めている「医療計画」は、基本的には危機そのものを想定していません。

例えば川崎市の「医療計画」には、「危機」や「有事」という言葉は一つも出てきません。

唯一「災害時医療」というのがあるだけです。

むろん、この「災害時」の中には、疫病パンデミックや外国からの武力攻撃事態は含まない。

地域医療構想会議も然りです。

因みに2〜3年前、川崎市の地域医療構想会議では、川崎市内に「外国人専用医療ツーリズム病院」のために病床を差し出すかどうかという議論が為されていた始末です。

もしもあのとき当該病院のために「病床」を差し出していたら、コロナ病床を含め市内の病床は益々逼迫していたところです。

言わでもがな、国防や災害のみならず医療もまた安全保障のひとつです。

各自治体は、危機をも想定した「医療計画」を策定すべきです。