共同体の安全と個人の自由

共同体の安全と個人の自由

東京都では「緊急事態宣言」が来月22日まで延長されることになりました。

依然として変異株を含めたウイルスの拡散と、ワクチン接種による集団免疫獲得との攻防が続いています。

そうしたなか、インターネット上において「打つと妊娠できなくなる」などのコロナワクチンに関する科学的根拠のない不確かなデマ情報が拡散されている、というニュースがありました。

しかし専門家らは「根拠がない」と否定しており、生殖機能への影響を調べる動物実験も行われているとのことです。

例えば、日本産婦人科感染症学会・早川智副理事長は、「動物実験で人に使う10倍以上の量をマウスやラットに打つ調査をした研究があるが、妊娠能力にも胎児の発育にも全く影響がなかった。また、妊婦特有の副反応も報告されていない」と言っておられます。

なお、早川副理事長は「米国では3万人以上の大規模な調査した研究があり、ワクチンを打ったから流産しやすいとか、早産しやすいという報告はなかった。新しい変異ウイルスが感染力も重症度も高いと言われているので、これが今後、広がっていくことを考慮すると打った方がいいと考えている」と述べています。

ワクチン否定派ご自身が接種をされないのは「個人の自由」の範疇ですが、他人様が接種するのを否定したり批判したりするのは尋常ではないと思います。

ましてや科学的根拠のないデマ情報を拡散するのは、むろん許されないことでしょう。

先日も、不可思議な論拠に基づく『新型コロナワクチン接種中止の意見書』なるものが私のところにもまわってきました。

何が不可思議かと言うと、例えば次のような主張がありました。

「厚労省はHPで新型コロナウイルスの無症状感染の可能性を指摘しています。しかしながら、厚労省がその根拠とする台湾からの論文には、無症状感染の確率は0.4%であると報告されています。無症状感染の確率は皆無であるとの報告もあります。したがって、無症状の新型コロナウイルス感染者と濃厚接触しても、感染しない確率は99.6%以上です」

一見、ごもっともそうなのですが、無症状感染の確率が0.4%であるならば、99.6%(100−0.4)は「無症状でない感染の確率」ということではないでしょうか。

それがどうして「無症状の新型コロナウイルス感染者と濃厚接触しても感染しない確率が99.6%…」という結論に至るのか、どうにも腑に落ちない。

さて、日本のメディアでは報じられておりませんが、米国ではワクチン接種に関する実に興味深い動きがでています。

『米国で病院勤務者に対するコロナワクチン接種の義務化を裁判所が初めて認める
https://www.usatoday.com/story/news/health/2021/06/22/houston-methodish-hospital-covid-19-vaccine-requirements-workers/5314704001/
米国のヒューストン市のキリスト教会系の病院グループによるワクチン接種の義務化に反対する病院勤務者が起こした訴訟で、裁判所は訴えを却下。訴えを起こした153名の病院勤務者は解雇もしくは退職した。この訴訟は、病院の患者を守るという立場がどこまで認められるかというもので、全米から注目を集めていた最初の訴訟であった』

『連邦法は雇用主が従業員にコロナワクチン接種を要求することを禁止していない
https://www.eeoc.gov/newsroom/eeoc-issues-updated-covid-19-technical-assistance
2021年の5月末に、米国政府の雇用機会均等委員会は、雇用機会均等法(EEO法)は、雇用主が1964年の公民権法第7編等の合理的配慮規定を遵守している限り、職場に入るすべての従業員にコロナワクチンの予防接種を義務付けることを禁止していないとの見解を示す

上記のとおり、米国では企業などの雇用主が従業員にワクチン接種を義務づけることに違法性はないとしており、なお最近では米国政府も「企業は従業員にコロナウイルスの予防接種を要求することができる」とガイダンスしています。

まこと、現在の日本では考えられないことです。

ただし当然のことながら、従業員への接種要求が差別を目的とするようなものであってはならず、あくまでも労働者の健康を守る目的であるという大前提があるのでしょう。

因みに、7月2日付けの『琉球新報』には、次のような記事が掲載されていたのでご紹介しておきます。

『西村大臣「ワクチン接種進めることが大事」 沖縄の状況「非常に危機感」
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1348262.html?fbclid=IwAR2azpJcq-YAz_d2Yo6emh4UpoxTwpY16xd8gO-g1Osyk6bhFR5TmwZ5WrA
西村康稔経済再生担当相は2日の閣議後会見で、沖縄県うるま市の県立中部病院で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)について、ワクチンを接種しなかった12人の看護師が感染した点に触れ、「接種を進めていただくことが大事だ」と述べた。(中略)病院側が1日の記者会見で公表した、感染患者のPCR検査の遅れがクラスター発生につながった可能性があることにも触れたほか、感染者に看護師15人が含まれる点にも言及。「医療機関の看護師では珍しいが、十何名打っていなかった方のうち、12名が感染したという風に聞いている」と述べ、15人のうち12人がワクチン接種を希望していなかったと強調した。(後略)』