実質賃金の下落止まらず

実質賃金の下落止まらず

きのう(令和6年5月9日)、厚生労働省から3月の『毎月勤労統計調査』が発表されました。

物価変動の影響を除いた実質賃金(現金給与総額)は、前年同月より2.5%減り、24カ月連続のマイナスとなりました。

比較可能な1991年以降で、過去最長を記録したことになります。

因みに、これまでの最長記録は、2007年9月から09年7月まで(リーマン・ショック)の23カ月間です。

要するに、ついにリーマン・ショックを超えたわけです。

ただ、報道各社は足並みをそろえて「24カ月連続のマイナス…」と強調していますが、これはあくまでも「現金給与総額」の話です。

「きまって支給する給与」でみますと、上のグラフのとおり、なんと26カ月連続のマイナスになります。

実質賃金はできるだけ「きまって支給する給与」でみるのが適切だと考えます。

なぜなら、基本給が継続的に上昇していくことこそが、家計の安定的な消費力を支えることになるからです。

そういえば第二次安倍内閣のとき、「実質賃金が下がっているのは、景気が良くなって就業者数が増えているのだから、一人あたりの実質賃金が下がって当然だ」と主張する、いわゆる安倍信者が大勢おりましたが、実質賃金は就業者数とか人口とかは全く関係ありません。

実質賃金は単純に財やサービスが売れた個数で決まります。

例えば、おにぎり屋さんがあったとします。

1個200円のおにぎりが、先月は100個売れたのに今月は90個しか売れなかった。

先月 200円 ✕ 100個 = 20,000円(売上高)

今月 200円 ✕ 90個 = 18,000円(売上高)

これを「実質賃金の低下」といいます。

さらにその次の月に、おにぎりの値段を1個180円に引き下げて販売した結果、120個売れた。

180円 ✕ 120個 = 21,600円(売上高)

これを「実質賃金の上昇」といいます。

現在の日本のようにコストプッシュ・インフレによって、おにぎりの値段が1個220円に上昇したものの、販売個数が85個に減ってしまった場合はどうなるでしょうか?

220円 ✕ 85個 = 18,700円(売上高)

物価(単価)は上昇しても販売個数が前月に比べて減ってしまったわけですから、むろん実質賃金の低下です。

このように、売上高は財やサービスの単価と販売個数で決まるわけですが、実質賃金は単純に「販売個数」で決定するのでございます。

むろん、あとはその企業の労働分配率でも変わります。

どんなに販売個数が増えても、その利益が人件費に反映されず、例えば株主への配当金に反映されてしまっては実質賃金は上がりません。

1990年以降の株主資本主義化(ネオリベラリズム化)によって労働分配率が上昇していないことも問題なのですが、現在の我が国の実質賃金の下落は、物価上昇の問題というよりも販売個数が増えないことこそが大問題なのです。

なお、販売個数を増やせない大きな要因の一つが消費税にあることは言うまでもありません。

消費税は減税、もしくは廃止すべきである理由はここにあります。