「No」と言えない国

「No」と言えない国

訪米中の岸田首相が本日未明に米国議会で演説し、「私はリアリストだ…」と強調されました。

国際政治において「リアリスト」と言った場合、日本語でいう「現実主義者」のニュアンスには収まりません。

とりわけ国際安全保障については、「軍事力を背景にした秩序を追求する者」という意になります。

要するに岸田首相は、日本の政局が今後どうなろうとも「米国様が望んでいる我が国の防衛力強化路線に変わりはない…」ということをバイデン政権に訴えたかったのでしょう。

国賓として迎え入れてくれたバイデン政権に対する、岸田首相なりの一つのリップサービスなのだと拝察します。

因みに、国際安全保障の世界では、秩序形成の手段としておよそ3つの派に分かれます。

1.リアリズム派(軍事力重視)

2.リベラリズム派(国際協調重視)

3.グローバリズム派(人権・環境重視)、あるいは人間安全保障などともいう。

岸田首相が米国議会で「私はリアリストだ…」と述べれば、当然のことながら軍事力重視の国際秩序の形成に力を注いでいくことを世界にむけて示したことになります。

本人にその気が無くとも、国際社会はそのように認識をし理解をします。

私もリアリズム派の一人ですが、まさか岸田首相もがリアリズム派であるとは知りませんでした。

だったら総裁選挙のときから言ってくれればよかったのに…

それにつけても、米国大統領選挙が事実上行われている真っ只中に、勝てるかどうか定かでないバイデン政権に媚と恩を売るような外交姿勢に舵を切って大丈夫なのでしょうか。

ここのところの報道を見るだけでも、トランプ氏の支持率は明らかに上がっています。

集会の動員数をみても、トランプ氏がバイデン氏を圧倒しています。

そうしたなかでの今回の首相訪米は、明らかにバイデン政権にとっては大統領選挙での援護射撃となっています。

以前、ヒラリー・クリントン女史が大統領候補であったとき、ヒラリー女史の勝利を見込んで媚を売り訪米した安倍元首相が、期待に反して当選したトランプ大統領に揉み手をするように慌てて擦り寄っていったことがありました。

そのことで、どれだけ我が国の国益を損ねたと思っているのか。

岸田首相は本当にリアリストなのでしょうか。

むろん、米国様から「この時期に来い…」と言われたら断れないのでしょう。

未だ日本は「No!」と言えない国なのでございます。