幼稚な財源論に陥る理由

幼稚な財源論に陥る理由

昨夜の日本経済新聞(電子版)で「自民党内が防衛増税をめぐって意見が割れている」という記事をみました。

なるほど「増税推進派」と「増税反対派」の間で激論が交わされ、喧々諤々の状態になっているのだろうと思っていたら、そうではありませんでした。

よく読むと、増税を始める時期を巡って自民党内の意見が割れている、ということらしい。

自民党税調の宮沢洋一会長が「年内に決定すべきだ…」としている一方で、国政選挙への悪影響を懸念している党執行部が慎重論を唱えているのだとか。

要するに、増税が必要なのか否かではなく「いつから増税するのか…」をめぐって意見が割れているというのですから実に情けない。

しかも延期する理由が「選挙があるから…」ですか。

今の我が国には「防衛力を強化するにあたって、増税する必要なんてないんですよ!」と、理路整然と国民に説明してくれる政党は一つもないのが残念です。

残念というより、危機です。

何度でも言います。

税金は財源ではない!

事実、予算編成から予算執行の過程をみても、税収は財源としての役割を全く果たしていません。

このように言うと「じゃぁ、なんで俺たちは税金を取られているんだ?」と言われるわけですが、むろん税を徴収しなければならない理由が他にあるからです。

その理由は少なくとも3つあります。

本当はもっとあるのですが、とりあえず3つ。

まず第一の理由は、ビルトイン・スタビライザー。

ビルトイン・スタビライザーとは、好景気の時期には徴税を増やし、可処分所得を減らすことで景気を沈静化させる。

逆に、不景気の時期には徴税を減らし、可処分所得を増やすことで景気を刺激して回復させる。

いわゆる、埋め込まれた景気の安定化装置の役割です。

理由の第二は、所得再分配による格差の縮小にあります。

すなわち、高所得者層から税金を徴収し、低所得者層あるいは国民向けの公共サービスに支出することで格差を是正して国内経済を安定化させる役割があるわけです。

理由の第三が最も重要です。

それは、租税貨幣論です。

私たち日本国民は、普段の経済活動のなかで、どうして「円」という通貨を使用しているのでしょうか。

なぜ「ドル」や「元」が日本国内では貨幣として流通しないのでしょうか。

もしもドルや元が国内の流通貨幣であったのなら、どうなるでしょうか?

その場合、日本政府は自国通貨建てで通貨を発行という通貨主権を失い、あるいは主体的な金融政策を行うことができなくなってしまいます。

そうならないように日本政府は、私たち国民に「円」による税を課しているわけです。

円で税金を支払わなければならないからこそ、私たち日本国民は給与においても売上においても「円」を集めなければなりません。

ドルや元で給料をもらっても税金を支払うことができません。

税金を払わなければ法的に罰せられます。

国内の流通通貨が「円」であるのはこのためです。

つまり、その国の流通貨幣は、その国の租税が決定するのです。

これが租税貨幣論です。

残念ながら、日本の国会議員や地方議員の大多数(99.9%!?)がこのことを理解していません。

我が国の財政議論が、常に幼稚な財源論に陥ってしまうのはこれが主因です。