復活できるか日の丸半導体

復活できるか日の丸半導体

我が国の政治には全く期待することができない最悪な状態が今後も続いていくことになりそうですが、私はテクノロジー分野については少しばかり明るい展望を持っています。

例えば、半導体。

現代のデジタル社会には欠かすことのできない半導体は、私たちの生活や経済活動にとって非常に重要な役割を果たしていることは言うまでもなく、スマートフォンから自動車、AIやIoTのデバイスまで様々な製品に使用されています。

当然ながら、これらの製品需要が高まるにつれ半導体市場は拡大しますので、デジタル社会が続く限り、半導体市場はさらに拡大していくものと思われます。

そして言うまでもなく半導体は、現代のデジタル経済で競争力を持つための中核となる技術です。

我が国が再びこの市場で競争力を持つようになれば、国内の雇用創出や経済成長を促進する大きな機会となり得ます。

現在、中国は2025年までに半導体の自給率を70%に引き上げるという目標を掲げ、そのために2020年だけで約600億ドルを半導体産業に投資しています。

一方、米国では2021年にチップ法案が成立し、半導体の製造および研究開発に約5,200億ドルの投資が行われる予定です。

こうした米中の動きは、半導体が国家戦略の一部となっていることを裏付けています。

むろん、我が日本国もまた半導体産業を再建しなければなりません。

また、よく知られているように、半導体技術は新たなイノベーションを生み出す基盤となるものです。

とりわけ、AI、クラウドコンピューティング、6Gなどの新技術は、高性能な半導体に依存します。

例えば、Googleの最新のAIモデルGPT-3は1,750億のパラメータ(一連の処理を指定するために与える情報)を持ち、これらのパラメータを効率的に計算するためには高性能な半導体が必要になるらしい。

同様に5G通信は高いデータ転送速度を実現するために、どうしても高性能な半導体が必要になるという。

日本がこれらの領域で強い競争力を持つためにも、半導体産業の復活が不可欠です。

そのためには、政府、企業、教育機関等々が一体となって、半導体技術の研究開発、製造能力の強化、半導体人材の育成に努めなければならない。

むろん、安全保障の観点から見ても半導体産業の復活は極めて重要です。

半導体は、軍事技術、医療、通信、交通など幅広い領域で使用されており、その供給不足は社会全体の安全と機能を左右します。

例えば、米中貿易戦争が激化し、米国政府が中国のファーウェイに対して厳しい制裁を科した際には、ファーウェイは米国製の高性能チップを調達することができず、生産を大幅に削減する事態に陥りました。

あるいは、2020年の新型コロナ・パンデミックや2021年のテキサス州での大寒波によって、世界中で半導体の供給が逼迫する事態が発生しました。

それにより、自動車産業からゲーム産業やIT産業にまで多岐にわたる影響を及ぼしました。

日本も例外ではありません。

2021年にルネサスエレクトロニクスの半導体工場で火災が発生したとき、その影響で自動車産業をはじめとする多くの産業に部品供給が滞る事態が起き、改めてサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしたのです。

これらの事例からも、半導体供給は国家の安全保障に密接に関わっていることが明らかです。

逆に言えば、日本の半導体産業が復活し、世界をリードする産業にまで発展すれば、多方面に多大なメリットを及ぼすことは間違いないでしょう。

しかし、復活劇を繰り広げるためには、長期的かつ大規模な計画を持ちつつ、同盟国との協力関係を構築し、技術革新や人材育成のための各種投資を行わなければなりません。

幸いにして、このことを我が国の経済産業省はよく理解されているようです。

例えば、日本国内では人材育成の課題に対処するため、産業界と教育機関の連携が強化されています。

具体的には、大学の電子情報学科や理工学部などで半導体に関する専門教育を強化し、卒業生の就職先として半導体業界を選ぶように奨励しているとのこと。

そして、2022年5月に成立した「経済安全保障推進法」は、日本の半導体産業を強化することを目的としていますので、特にレガシー半導体や、その製造装置、素材などに対する支援が期待されるところです。

当該法律に基づき半導体製造に必要な設備や素材の国内生産を促進するため、国内企業に対して製造設備投資の補助金を支給することになっています。

その額は総額で3兆円を超え、2022年から2025年までの4年にかけて投入される予定です。

また、企業が新たな半導体製造工場を建設する際には、最大で建設費用の半分を補助金で賄うとしています。

さらに当該法律では、最新の半導体製造技術を開発するための研究開発プロジェクトに対して、年間最大5,000億円の補助金が投入されることになっています。

これにより、日本の企業や研究機関は新たな半導体技術の研究開発に必要な資金を得ることができれば、結果として日本の半導体技術の進化と競争力の向上につながるはずです。

日の丸半導体の復活に期待したい。