実質賃金 17カ月連続の下落

実質賃金 17カ月連続の下落

昭和34年に制定(公布)された最低賃金法により、雇用主は労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払わなければならず、また、最低賃金を適用する労働の範囲や具体的な金額などを労働者に対し広く知らせねばならない義務を負っています。

例え従業員との合意があったとしても、雇用主は最低賃金未満の賃金で雇用契約を交わすことはできません。

細かいことを言うと、最低賃金には、地域共通の(業種に関係ない)「地域別最低賃金」と、産業別の「特定最低賃金」の2種類があります。

対象となる特定産業は都道府県ごとに異なり、特定最低賃金に従事する人はいずれかの高い方を採用できます。

さて、去る8月18日、2023年度の都道府県別の最低賃金額が厚生労働省から発表されました。

これは、7月28日の中央最低賃金審議会が示した最低賃金改定の目安などをもとにして、各地方最低賃金審議会が答申した結果を取りまとめたものです。

これを受け、今月(10月1日)から最低賃金の引上げが開始されています。

具体的には、37都道府県で39円~47円引き上げられ、全国平均加重平均額は1,004円となりました。

結果として、昨年度の961円から43円の引き上げ幅は過去最大であり、全国平均加重平均額が1,000円を上まわるのは初めてとなります。

因みに、最も時給が高い都道府県は東京都の1,113円で、次いで神奈川県の1,112円、大阪府の1,064円と続きます。

今年度は埼玉県、愛知県、京都府、兵庫県が新たに1,000円を超え、これで1,000円超えは8都道府県になりました。

引き上げ額が最も高かった都道府県は、島根県、佐賀県の47円、最も低かったのは岩手県の39円でした。

最低賃金(名目賃金)が上がるのは、むろん良いことなのですが、問題は実質賃金が上がるかどうかです。

どんなに名目賃金が上がったところで、それ以上に生活必需品などのインフレ率が上昇してしまえば、それ即ち貧困化です。

上のグラフのとおり、我が国の実質賃金(きまって支給する給与)は、21カ月連続でマイナスという悲惨な状況です。

こうしたなか、人手不足に悩む地方などは1円の上げ幅を競い合っており、働き手は「年収の壁」に、中小零細企業は「価格転嫁の壁」に悩んでいます。

これらの問題の根底にあるのは、デフレ(需要不足)経済です。

食料品などを中心に一部の物価が上昇し高止まりしているのは確かですが、それらは為替相場や輸入品価格の上昇、すなわちコストプッシュが原因であって、景気(需要)の高まりからインフレ率が上昇したわけではありません。

もしも需要の高まりによってインフレ率が上昇しているのなら、やがてそれは(労働分配率の問題を除けば)必ず実質賃金の上昇につながります。

また、人手不足に悩んでいるのは、地方だけではありません。

川崎市のような都市部でも同様です。

1円でも賃金を引き上げて最低限の人員を確保したいのは山々ですが、賃金を支払う雇用者側としては売上が伸びない以上、なかなか賃金を引き上げることができないでいます。

例えば、夫婦ふたりで3〜4人のアルバイトを使って経営する喫茶店があった場合、お客さんの数も売上も変わらないままに最低賃金だけが上昇すれば、当然のことながら経営は圧迫されます。

当然のことながら、売上さえ上がってくれれば、最低賃金の上昇など苦にはならないわけです。

最悪なのは、10月1日からインボイス制度が導入されたことです。

これは、事実上の消費税増税です。

輸入物価の上昇は、日本人の所得が外国に吸い取られることを意味していますが、消費税の増税は、日本人の所得が政府に吸い取られていることを意味します。

しかしながら、政府が吸い取ったからといって、べつに国が豊かになっているわけではありません。

ただ単に、国民経済から貨幣が消滅しているだけです。

それ即ち、デフレ化です。

国民経済はデフレで苦しんでいるのに、政策的に更にデフレ化を進めているのが今の政治なのです。