米国の軍事力

米国の軍事力

昨今、「米国支配の終焉…」「米帝国の崩壊…」と言うような、いわゆる米国の退潮をネタにした評論が多くなりました。

ただ、米国の覇権国としての力が衰えつつあるとはいえ、その軍事力は未だ世界最強であることは言うまでもありません。

軍事力を表す最も明確な指標である軍事予算をみますと、米国の軍事予算は日本円にして約80兆円です。

全世界の軍事予算を合計すると220兆円ですので、米国だけで全世界の軍事力の3分の1以上を拠出していることになります。

因みに、世界第2位の中国は25兆円、3位のサウジアラビアが7兆円ですので、中国台頭の脅威が叫ばれている昨今ではありますが、それでもやはり米国の軍事予算は圧倒的です。

予算の内訳をみますと、陸軍が約18兆円、海軍が海兵隊を含めて約25兆円、空軍が約23兆円、さらに統合軍が約12兆円となっています。

例えば空軍だけをみても、米国は約5,000機の作戦機を保有し、有事には即時対応できる体制を整えています。

最も主力の制空戦闘機F22を178機も保有しています。

F22の戦闘力は1世代前のF15の戦闘力を圧倒的に凌駕しており、F22 vs F15の模擬戦では、旧世代のF15がF22に勝利した確率は144回に1回という驚異の戦績を発揮しています。

F22が誕生する以前は、F15戦闘機が世界最強と言われ、数多くの実戦に投入されていますが、これまで1機も撃墜されたことがありません。

F15でさえ、それなのですから、F22がいかほどに強いのかがよく解ります。

F22のコストを抑えたかたちで開発されたのがF35で、米国はF35だけでも300機保有しています。

しかも追加で1,500機の導入が既に決定しています。

それとは別に、F15戦闘機を220機保有していますので、制空戦闘機だけで3,000機ほど保有することになります。(海兵隊を含めると700機のF35を保有する予定)

日本の自衛隊は現在、世界第9位の軍事費を確保していますが、制空任務に使用される戦闘機の数は200機ほどです。

なお、空中空輸機の保有数を比較しても、日本がたったの6機であるのに対し、米国は500機も保有しています。

米国が今なお桁違いのエアーパワーを維持しているのかが、よくご理解頂けるものと思います。

しかも、その強大なエアーパワーよりも、最も軍事予算をつぎ込んでいるのが海軍です。

米国の象徴的存在とも言える「空母」の保有数は11隻で、そのサイズは長さが330メートル、幅が80メートル、排水量は10万トン、最大で90機の作戦機を搭載でき、その戦闘力は一国の軍事力に匹敵します。

おそらくは、日本の海空自衛隊が束になっても、米空母一隻に勝てないはずです。

そうした空母(動く領土)を、米国は常に11隻体制を採ることで強大なシーパワーを確保しています。

なお、中国の脅威への対抗上、米国はさらに1〜2隻増やすことを計画しているようです。

むろん、それ以外にも米海軍は、例えば60隻以上の攻撃型潜水艦を保有し、その動力は全て原子力であり、人間用の食料と、その精神力が保てるかぎり、潜航し続けたまま作戦を継続することが可能です。

しかも、核ミサイルを搭載した数隻の原子力潜水艦を常に遊弋させることで、相手国に対する核による抑止力を保っています。

空・海とくれば、陸についても触れねばならないでしょう。

海で囲われた日本の場合、最後の防衛ラインは海岸線であり、敵兵の上陸を阻止することが重要となります。

そして上陸阻止のために、陸の力が威力を発揮します。

なぜなら、日本が強力な陸軍を持っていれば、侵攻を狙う国はその対策として重火器や重い戦車、大量の陸軍兵器を輸送する必要があります。

輸送物資が多くなれば、作戦は複雑で難しくなるため、実現しそうにない上陸作戦を諦めざるを得なくなります。

すなわち、強力な陸上パワーは、いつでも稼働できる能力を持っているだけで大きな抑止力になるわけです。

通常兵力が脆弱な北朝鮮が、ミサイル発射で威嚇することしかできないのはそのためです。

我が日本の陸上自衛隊は戦車を500両前後ほど配備し、このほかに16式戦闘車を140両ほど持っていますが、世界最強の米国はどうでしょうか。

まず、主力戦車が6,500両以上、戦車のようにキャタピラで動く歩兵戦闘車が6,000両、同様にキャタピラで動く装甲兵員輸送者が5,000両以上、桁が間違っているのではないかと勘違いしてしまうほどの戦闘力です。

北朝鮮は言うに及ばずですが、さすがの中国でさえ、太平洋を越え米国の西海岸から陸上兵力で侵攻作戦を展開するのは不可能でしょう。

このほか、攻撃用ヘリコプターや様々な兵器を日本の10〜100倍の規模で取り揃えており、しかもそれらは常に最新のものに更新を続けています。

米国と正面からぶつかりたいと考える国があるのなら、その理由はその事実を知らないこと以外にあり得なさそうです。

このように米国は80兆円以上という世界でもダントツの軍事費を拠出していますが、その強さはそれだけではありません。

何よりも、世界のいかなる国よりも、その実戦経験が豊富なことです。

そこから生み出される兵器は、まさに「使える兵器」であり、世界最強の力を持っています。

そして、いかに中国が米国に追いつこうとしても、その差はなかなか縮まらないでしょう。

理由は簡単です。

蓄積の違いからくる技術向上のスピードに大きな差があるからです。

むろん、経済成長率の差も関係します。

現在、米国のGDPは約2,500兆円ですが、それが2050年には4,000兆円まで拡大すると言われています。

GDPが伸びれば、自然、軍事費も伸びます。

米国の経済成長のスピードに、はたして中国経済がついていけるかどうか、ということです。

言うまでもなく、他国の心配をしている場合ではありません。

我が国は、この20年間にわたりGDPが増えていません。

このままいくと、2050年になってもGDPが600兆円に充たない、という予測すらあります。

そのことが何を意味しているのか、せめて政治家たちには理解してほしい。