カネで買うことを前提にした食料安全保障は間違い!

カネで買うことを前提にした食料安全保障は間違い!

少子化対策が政治課題となっている我が国においては、あまり実感がないかもしれませんが、世界では人口が増え続けています。

そこに、コロナ禍、異常気象、中国の爆買い、ウクライナ紛争のクワトロ・ショックが追い打ちをかけ、世界的な食料危機の可能性が指摘されています。

むろん我が国も例外ではありません。

コロナ禍に見舞われ、世界各地で物流が滞ったことは記憶に新しいし、平均気温が上昇することで、例えば穀物収量が増減したり、畜産や養殖業における疾病が発生したり、漁獲量にも影響したりするのは周知のとおりです。

アジアの大消費地である中国では、小麦、大豆、トウモロコシ、牧草、魚粉、肉、魚の輸入量が拡大しています。

中国は、例えば大豆を年間で1億300万トンを輸入していますが、その全てを輸入に頼っている我が国の大豆輸入量はわずか300万トンに過ぎず、中国の輸入量の端数でしかなく完全に買い負けしています。

輸出国からすれば「わざわざ小分けして日本に輸出する必要などない…」となってしまうわけです。

そして、ウクライナ危機。

世界の小麦輸出の3割を占めているロシアとウクライナが戦争しているわけですから、その影響が小さいわけがありません。

ロシアとロシアの同盟国であるベラルーシは、食料・資材を戦略的に輸出しないことで脅しをかけるなどして、外交上の武器として使っています。

また、耕地が破壊されたウクライナでは播種も充分にできず、ロシアによる海上封鎖もあって穀物を輸出したくてもできない状況にあります。(破壊封鎖による物理的な停止)

我が国の場合、小麦を米国、カナダ、豪州などアングロ・サクソン国家に依存しているのですが、代替国に需要が集中して食料争奪戦は激化しています。

そうしたなか、インドのように自国民の食料確保のために防衛的に輸出規制する動きが加速しており、こうした輸出規制を行っている国が30カ国にも及んでいます。

世界的な食料危機が懸念される一方、我が国の食料自給率(カロリーベース)は1965年度の78%から1998年度には40%まで低下し、直近では37%にまで落ち込んでいます。(上のグラフは2021年度時点)

因みに、食料自給率が下がり続けた理由で、よく誤解をされているのが「食生活の変化」説です。

当該説は「日本の農地と農業生産力は限られているのに、食生活の変化に伴う食料需要が増大したために対応しきれなくなったのだ…」というものです。

いかにも、ごもっともらしい説ですが、騙されてはいけません。

真の要因は、政策にあります。

戦後、我が国は米国の要請で貿易自由化を進め、食料を輸入に依存させられました。

何のために?

むろん、日本の農業を弱体化させるために…

しかも米国は、日本人の食生活を米国の農産物に依存するかたちに誘導しました。

結果、我が国の食料市場は、米国の余剰農産物の最終処分場と成り果てたのです。

これほどの短期間に、伝統的食文化を変更させられた国もまた珍しい。

不幸だったのは、そこにまた財務省の緊縮財政至上主義が重なったことです。

農水予算を削減するための財政政策が展開されて、日本の食料生産能力は低下し輸入が益々増加、国内農業は縮小し続け食料自給率は低下したのです。

食料自給率の低下が甚だしいのですが、現実は更に深刻です。

例えば、私たちが食している野菜の国産率は80%を誇っていますが、種採りの90%は海外圃場であることを考慮しなければならず、それゆえにもしも物流が停止してしまうと、野菜の自給率は8%にまで低下します。

ウクライナ紛争もあって種の受給逼迫は著しい。

あるいは、物価の優等生とされてきた鶏卵の国産率は97%ですが、もしも養鶏所の「餌」が止まれば自給率は12%にまで落ち込みます。

その雛に至っては100%が輸入ですので、もしも雛の輸入が止まれば鶏卵の自給率は0%となります。

化学肥料原料もまた然りです。

リン、カリウムは100%、尿素は96%が輸入依存で、その調達が滞れば国内生産は壊滅的です。

その調達も中国の輸出抑制で困難になりつつあった矢先に、中国と並んで大生産国のロシアとベラルーシが輸出してくれなくなり、高くて買えないどころか、既に製造中止の配合肥料も出てきており、今後の国内農家への肥料供給の見通しが立たなくなっています。

カネがあっても買えない事態に、カネで買うことを前提にした食料安全保障では太刀打ちできません。

今、突きつけられた現実は、食料、種、肥料、飼料などを海外に過度に依存していては国民の生命を守ることができないということです。