長期化するウクライナ戦争

長期化するウクライナ戦争

ロシアによるウクライナ侵攻から1年と2ヶ月が過ぎましたが、戦闘は今なお続いています。

4月28日、ロシア軍は首都キーウをはじめ各地に巡航ミサイルや無人機による攻撃を加え、中部ウマニでは子供5人を含む23人が死亡したほか、東部ドニプロでも2歳の女の子と母親が死亡するなど、少なくとも25人が犠牲になっています。

29日には、クリミアの軍港都市セバストポリのロシア軍幹部がSNSに「燃料の貯蔵施設が燃えている…」と投稿し、「無人機による攻撃によって引き起こされた」と主張しています。

残念ながら、ウクライナ戦争は全く終わる気配がなく、かなりの長期化の様相を呈しています。

さて、歴史的にみても、戦争が終わるには二つのケースしかありません。

一つ目は、当事国がもう一方の当事国の軍事力を徹底的に無力化した場合です。

先の世界大戦やイラク戦争がそうでした。

二つ目は、当事国双方が妥協を受け入れた場合ですが、ご承知のとおりロシアとウクライナの双方が「祖国防衛戦争」を主張していますので、お互いに妥協の余地(意志)はありません。

即ち、ロシア・ウクライナ双方に相手を無力化させる能力もなければ、妥協する意志もないのでございます。

ウクライナは欧米が援助するかぎりにおいて妥協することなく領土を奪還するまで戦争を終結させる意志はないでしょうし、ロシアもまた戦争遂行を可能にするためのリソースが続く限り妥協する意志など微塵もないでしょう。

これでは、戦争終結の目処など立ちようがない。

当該戦争は、ウクライナ側からみればロシアによる軍事的侵略でありましょうが、ロシア(プーチン大統領)側にしてみれば、NATOの東方拡大(ウクライナのNATO加盟)は安全保障上、喉元に匕首を突きつけられたのも同然なのでやはり「祖国防衛戦争」となります。

こうしたロシア側のロジックが、ここにきて特に先鋭化しています。

そのきっかけは、欧米がドイツ製の戦車である「レオパルト2」をウクライナに供与したことです。

第二次世界大戦時の独ソ戦は、ロシアにとってはまさに「ナチスヒトラーによる侵略からの祖国防衛戦」(大祖国戦争)でした。

第二次世界大戦(独ソ戦を含む)において、ソ連は2700万人の犠牲者を出しています。

独ソ戦では、ドイツ軍の「ティーガー戦車」がソ連領に侵攻し、ソ連軍を苦しめたわけです。

プーチン大統領にしてれみれば、欧米がウクライナに供与した「レオパルト2」こそが、現代の「ティーガー戦車」なのです。

「ロシア国民よ。ほら見てみよ。ドイツ軍が再び攻めてきたぞ…」と言うわけです。

因みに、かつて『T-34』(2019年)という映画がロシアで大ヒットしましたが、この映画はドイツのティーガー戦車に対抗するためにつくられたソ連製の戦車T-34が活躍し、危機に陥ったソ連を救ったという物語です。

そういえば当初、ドイツがレオパルト2の供与を拒んでいましたが、おそらくはこうした背景があってのことだったのでしょう。

ナチスヒトラーによる侵略戦争は、現在のドイツ国民にとっては未だ贖罪なのです。

プーチン大統領としては「地獄の独ソ戦に勝利した我がロシアは、再び立ち上がらねばならない…」というロジックで挑んでくるでしょうから妥協の余地などあるわけもありません。

現に、ロシア国内では大規模な反戦デモは起こっておらず、政治的にプーチン政権は反戦ムードをほぼ抑え込むことに成功しているという。

戦争は長引きそうです。