台湾有事への備え

台湾有事への備え

中共政府は、いつ台湾侵攻を決断するのか…

日米の政府高官、米軍・自衛隊幹部の間では、密かに「台湾有事」を想定した机上演習が行われているらしい。

なにが侵攻のきっかけになるのか。

攻撃の第一波はどのようなものになるのか。

上陸戦はどのように展開するのか。

米軍の参戦とともに、日本はどのように巻き込まれていくのか。

わが国としては今から腹をくくり、緻密な想定に基づいて即応対処の体制を構築しておかねばならないのは当然のことです。

とはいえ、中共政府にとっても、戦争とはあくまで他のあらゆる手段を出し尽くした後の最終手段であると考えているはずです。

まずは戦争以外の手段で平和的に台湾を飲み込みたいと考えているにちがいない。

なぜなら、現実的に軍事侵攻するにしても、意外と物理的ハードルが高いからです。

例えば、中国が台湾に侵攻するためには、何らかの手段で160kmほどある台湾海峡を渡り、大量の陸軍を台湾本島に送り込む必要があります。

しかしこれは、現代においても非常に困難な作戦となります。

一般論では、ある地域を占領し、そこを支配下に置くためには、最低でも市民50人に対して兵士1人が必要だと考えられています。

だとすれば、台湾の人口はおよそ2,400万人であるため、中国は単純計算で50万人の陸上兵力を台湾に送る必要があります。

中国軍(人民解放軍)の全兵力が約200万人と見積もられているため、兵力の大部分(4分の1)を台湾侵攻に割く必要があるわけです。

さらに、台湾という島自体が侵攻するのが難しいという問題があります。

台湾海峡は東シナ海と南シナ海の境目に位置しているために潮の流れがきつく、加えて台湾の西側は浅い海が続いているために大型の船は沿岸部に近づき難い。

なお、東側の海岸は切り立った崖が多いために大量の兵士を一気に送り込めるような場所は限定されています。

当然そのことは台湾側も熟知していますので、そうした限定された場所で守りを固める戦略をとることが予測されます。

そうしたなかで中国軍が強引に上陸作戦を展開すれば、おそらく双方ともに多数の死傷者が出る大惨事と化すことでしょう。

とはいえ、そもそも今の中国軍には、50万もの陸上兵力を台湾に上陸させるだけの揚陸艇や輸送機がない。

そこが中国軍の泣き所です。

ただ、あと5〜6年もすれば、それらの装備を完璧にするかもしれない。

また5〜6年後、習近平体制がどうなっているか…

政治外交、軍事、経済、様々な角度からアプローチして、不確実な未来に対峙していかねばならない。

ただ、以前にも申し上げましたとおり、中国が武力的に侵攻するというのは一つの可能性に過ぎません。

中国は台湾の防衛力を調査し、情報戦など明確な武力攻撃でないやり方で台湾に圧力をかけてダメージを与える「ハイブリッド戦」を加速させていくはずです。