EVバブルの崩壊

EVバブルの崩壊

イーロン・マスク氏がCEO(最高経営責任者)を務めるテスラ社は、電気自動車、家庭用からグリッドスケールまでのバッテリー電動輸送器、ソーラーパネル、ソーラールーフタイル、およびその他の関連製品とサービスを主たるビジネスにしています。

企業の価値を示す指標として株価の「時価総額」というものがありますが、これは発行株式に株価を掛けたもので、時価総額が大きければそれだけ企業の価値が高いとされています。

自動車業界では日本のトヨタ自動車が時価総額でトップの座に君臨していたのですが、2020年に入るとテスラの株価が急速に上昇し時価総額を押し上げ、同年7月2日にはテスラがトヨタの時価総額を上回るに至りました。

テスラ株が上昇した要因は、むろん電気自動車の需要が高まるという世界的な期待が高まったからです。

即ち、電気自動車が売れれば、製造販売するテスラが大きな利益を挙げられるという予想が高まったということです。

電気自動車を積極的に開発する自動車メーカーは投資家から注目を集め、テスラ以外にもそういったメーカーの株式は買われました。

SDGsは、明らかにその材料に使われています。

ところが、ここのところ自動車メーカーの株価が下落しています。

2022年1月から2023年1月までの1年間の株価をみますと、例えば、フォルクスワーゲンが32%減、BMWが7%減、フォードが43%減、日産自動車が30%減、トヨタ20%減です。

そして、投資家から注目を集める電気自動車メーカーの株価の下落は更に際立っています。

テスラ株などは1年で73%も下落してしまいました。

中国の電気自動車メーカー「NIO」も1年で71%下落、中国新興EV「小鵬汽車」も1年で78%下落しています。

このように、電気自動車に注力しているメーカーほど下落幅が大きくなっているのがわかります。

下落というより、ほぼ暴落です。

株の世界について私はズブの素人ですが、電気自動車株が大暴落した理由については概ねの見当がつきます。

おそらくは、電気自動車の「需要低迷」と「納入台数が当初の予想を下回っている」ことにあるのではないでしょうか。

期待が高まっているとはいえ、一気に電気自動車が普及したとは言い難い現実があります。

わが国の2021年の新車販売データでは電気自動車の割合は約1%にとどまっています。

テスラがビジネスの主力である米国でさえ約2.9%ですので、期待されたほどに一気に電気自動車が普及しているわけではないのでございます。

電気自動車に関しては、いくつかの運用上の問題点が指摘されていることは、当該ブログでも以前にご紹介したとおりです。

たぶん、それが障害になっているのだと推察します。

国策として新エネルギー車の導入を行っている中国では、電気自動車の充電スタンドの数が不足しており、利用者が充電に苦労していることが社会問題化しているらしい。

電気自動車は構造上、どうしても充電にかなりの時間を要しますので、ガソリン車やハイブリッド車のように、気軽にスタンドで給油して走行するようにはいきません。

そのため連休になると、充電スタンドに充電待ちの電気自動車が大勢並んでしまうという状況になっているようです。

さらには充電するために必要な電気代も高騰していて、電気自動車を維持するためのランニングコストが上昇してユーザーの購買意欲を低下させているらしい。

このように電気自動車特有の問題が表面化しているわけです。

加えて、投資家にとって企業が掲げた経営計画通りにビジネスが推移しているか否かは重要な判断材料です。

テスラ車のビジネス形態として、どれだけ電気自動車を納入できたのか、あるいは販売できたのかは重要なファクターですので、「納入台数が当初の予算を下回っている」のでは投資資金を引き上げられて当然です。

因みに「1月20日から31日まで上海工場の生産が停止される…」という報道が流れましたので、これらのことが相まって株価下落の要因になっているのでしょう。

このように電気自動車関連株が暴落にちかい値下がりをしているのは、バブル崩壊の典型的な構図です。

期待感が先行して株価を押し上げ、そして実際の実績が伴わないことで、投資家が一気に株式を売り浴びせる。

そもそも今となっては、電気自動車が次世代のクルマとして覇権を握るのかさえ怪しい。

電気自動車の製造には欠かせないバッテリーの材料は希少であり、コストをなかなか下げられないことに加え、いざ運用するとしても、充電や航続距離の問題も表面化しています。

電気自動車もあっていいとは思いますが、例えば水素自動車、あるいは日本のお家芸であるハイブリッド車など複数の選択肢を組み合わせたベストミックスを世界は模索するべきだと思います。