財源と環境は、道路整備の反対理由にはならない

財源と環境は、道路整備の反対理由にはならない

正月休みを故郷などで過ごされた人たちのUターンラッシュがはじまり、きのう2日は各高速道路の上りを中心に渋滞が発生したとのことです。

本日3日は、さらに渋滞する見込みらしい。

各高速道路が直結する首都高もまた、だいぶ混雑することでしょう。

さて、その首都高ですが、当該道路は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に路線を展開する有料の自動車専用道路であり、首都圏の物流や交通を支える高速道路として大動脈の機能を果たしています。

首都高について私には物心ついたころから一つの疑問がありました。

それは、首都高が関越自動車道(以下、関越道)とだけ直に接続していないことです。

首都高は東京都内に乗り入れる高速道路のほぼ全てとつながっているものの、なぜか唯一、関越道だけがつながっていないのでございます。

関越道は東京の練馬ICから埼玉や群馬を経由して長岡IC(新潟)へ至る高速道路で、一日平均で約20万台が関越道を利用しています。

因みに、関越道が全線開通したのは私が中学3年生のときです。

当時から「新潟県に選挙区をもつ田中角栄(元総理)が[新潟〜東京間]を走る関越道の東京側入り口を、東京の田中邸がある目白通りにもってこさせた」などという説が噂されていましたが、私は信じていません。

これはある種の都市伝説だと思います。

関越道は、その位置的利便性から当然の道筋であり、角栄先生の目白邸を意識したものとは考えにくい。

むしろ、田中邸のほうが新潟から来る道筋を選んで建てられたと考えたほうが合理的です。

もしも角栄先生がその気になっていたならば、それこそ目白邸の前までICをもってきたにちがいない。

さて、関越道だけが首都高に直結していない理由として、もっとも有力な説は次のとおりです。

関越道は、首都高「練馬線」なるものを建設して首都高5号池袋線につなげる予定だったのですが、あまりにも5号線の交通量が多く、交通渋滞が多発していたために建設を断念した、というもの。

2006年9月に国交省に策定された首都圏の道路等の整備に関する事項について定めた『首都圏整備計画』にも、今もってなお首都高と関越道を結ぶ「高速練馬線」として調査を推進する路線に位置づけられています。

なるほど、関越道と首都高をつなぐ構想を象徴しているものとして首都高5号池袋線「早稲田出口」があります。

この早稲田出口は降りてみるとよくわかるのですが、出口にしてはやたらと長いのです。

なぜ長いのかと言うと、この早稲田出口こそが関越道につながる路線の分岐点として設計されたからだ、と言われています。

この出口の建設が始まったのは1974年3月25日で、実際に開通したのは1987年1月23日です。

一方、早稲田出口の前後区間、即ち[西神田出入口〜護国寺出入口間]が開通したのは1969年のことですので、早稲田出口は周囲の区間より約20年も後になって開通したことになります。

このことは、早稲田出口が他の出入口とは異なり、他路線との接続を考慮して後から作られたことを表しています。

残念ながら、関越道と首都高との接続計画がなかなか進まないのは、首都高5号池袋線のキャパシティ(渋滞問題)だけではないようです。

とりわけ、高速練馬線の計画上にある近隣住民による反対の声も大きいらしい。

練馬区が公表している『外環の都市計画変更案に関する練馬区意見』によると、例えば「環境宣言をしていながら、ICを建設するのはおかしい」「料金所や坂道部分では排気ガスが蔓延し、大泉地区は最悪の生活環境になる」などの環境に対する懸念の声が目立つようです。

であれば、大深度(地下40メートル以下)で地下化して首都高と接続すればいい。

それに、やがては自動車からは排気ガスが出ない時代がくるのですから。

大深度地下の工事は買収しなければならない用地も少ないので、いったん計画に乗れば工事が進みやすい。

例えば、2015年に開通した首都高中央環状品川線(以下、山手トンネル)は、沿線の環境問題などを背景に1970年に一度は計画中止に追い込まれたのですが、1990年に新規路線として調査を開始し、2004年に大深度地下トンネル式として都市計画が決定、そして2015年の開通となったわけです。

都市計画決定から、わずか11年で完成しています。

なぜ、この話をしたのかと言いますと、昨年末に私が川崎市議会で質問した案件があったからです。

私は川崎市議会で…

①小田急線の連続立体交差事業

②小田急線の複々線化事業

③世田谷町田線(世田道)の拡幅事業

…について、①②③を一体的に事業化すべきである、と提案しています。

これら一体的事業化も、山手トンネルと同じように地下を利用すれば可能です。

ただ、ここで最大のネックになるのが、おなじみの「財源論」です。

「日本は人口が減るから、そんなにおカネはかけられない…」

むろん、まったく理屈にならない理屈です。

首都高と関越道の接続についても同様ですが、生産年齢人口比率が低下するからこそ、都市部においても生産性向上のためのインフラ整備は必要なのでございます。

そして、おカネ(財源)はあるのです。

いつも言うように財源論に陥ったら、政策論の負けです