原子力防災空母の整備を

原子力防災空母の整備を

今月6日、岸田総理が米空母ロナルド・レーガンを視察しました。

この日、各国の海軍艦艇を集う国際観艦式が久しぶりに日本で行われたのですが、米海軍として正式に派遣したのはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の16番艦「チャンセラーズビル」1隻のみでした。

それを聞いたとき私は「日本の唯一の同盟国としては少しショボすぎるのでは…」と思ったものの、米海軍はチャンセラーズビル以外にも、国際観艦式が挙行された相模湾を通りかかったと称して空母ロナルド・レーガン(ニミッツ級原子力航空母艦)を送り込んでいました。

ご承知のとおり、空母ドナルド・レーガンは横須賀基地を母港とする米海軍第7艦隊に2015年から配備されている航空母艦です。

これを中核とする空母打撃群は直近では朝鮮半島沖に派遣され、その地で韓国軍との合同軍事演習や、さらにそこに日本の海上自衛隊の護衛艦を加えた三カ国での対潜戦闘訓練などを行っています。

米海軍が朝鮮半島沖にロナルド・レーガンのような大型の原子力空母を派遣したのは2017年の秋以来のことで、むろん北朝鮮を牽制するための行動です。

米国や韓国が分析しているとおり、北朝鮮は核実験の再開を強行しようとしているらしく、その兆候を掴んだからこそ空母ロナルド・レーガンを中核とする空母打撃群を朝鮮半島沖に派遣したのであろうと推察します。

それでも北朝鮮の姿勢は変わらず、むしろこれまでにない頻度で各種の弾道弾や巡航ミサイルの発射を繰り返しています。

北朝鮮が米韓への対決姿勢を示すにはミサイル発射しか具体的な手段が無いとはいえ、ここのところのミサイルの発射頻度からは制度は別としてもその運用能力を高めていることが感じられ、その彼らにとっての恫喝気分は増すことがあっても減ることはなさそうです。

それにつけても度重なるミサイル発射について、日本の総理や防衛大臣はその都度「遺憾である…」「厳重に抗議しました…」と発言するしか対抗手段がないのも実に情けないことです。

もっとも米国でさえ、仮に北朝鮮が核実験を強行したとしても、追加で同国に突きつけることのできるカードはほとんど無いのも事実です。

さて、このような状況下のなか、国際観艦式の後に岸田総理は、(偶然に通りかかったと称されている)空母ロナルド・レーガンを訪れ、直接乗艦してエマニュエル駐日大使らに迎えられています。

岸田総理はヘリコプターでロナルド・レーガンに乗り込んだらしいのですが、そこで出迎えた駐日大使らの対応ぶりを考えますと、それが全く予定されていなかった行動だとは思えません。

我が国の総理が米空母を訪れるのは平成27年の安倍晋三元総理以来2回目のことで、岸田総理は説明を受けながら艦内を視察し、戦闘機の操縦席にも座ったという。

その際、中国海軍の新型空母「福建」(中国の国産としては2隻目)のことが話題になったらしく、岸田総理は「福建」に装備された艦載機発進用の電磁式カタパルトを「中国がうまく運用できるのか?」と質問したらしい。

それに対して米国側は「運用可能な船員が育っていないだろうと」と答え、岸田総理は「なるほど、機械だけではなく技術や人の能力が求められるということなのだろう」と納得したという。

ロナルド・レーガンらのニミッツ級の原子力航空母艦を米国海軍は10隻を保有していますが、それらは何れもカタパルトには蒸気式が採用されており、電磁式が搭載されているのは最新鋭の「ジェラルド・R・フォード」1隻のみです。

なので岸田総理の質問の意図は、一つに中国が運用経験のないカタパルト方式を「福建」で実際に使用可能なのかという点と、もう一つにそれが米海軍にとっても電磁式を採用することは現実的なのかという2点にあったのではないでしょうか。

中国海軍は「福建」を進水させた時点でも3基を装備するとみられている電磁式カタパルトの設置部分には覆いをかけ隠した状態にしていました。

おそらくは今はまだ、これから行う艤装工事のなかでそれらを完成させていく段階にあるのだと推察されます。

米国海軍でさえ、電磁式カタパルトを採用した「ジェラルド・R・フォード」は2017年に就役した形でありつつも、電磁式カタパルトや兵装運搬用のエレベーターに不備が続き、実際の戦力化は今年2022年末と予想されているくらいです。

電磁式カタパルトは従来の蒸気式に比べて艦載機ごとに適切な射出力を微調整できることから、発艦の効率がより高まることが期待されていましたが、米国でさえも実運用には5年もの歳月を費やしていることから制御が容易な技術ではないようです。

私は、我が国の核保有を議論する前に、まずは航空母艦の保有が優先されるべきだと考えております。

日本の領海及び排他的経済水域(EEZ)の面積は約447万平方kmあり、その大きさは国土の約12倍もあり、なんと世界第6位の広さです。

よって、空母を遊弋させることのできる防衛力を整備することは必然ですし、なにより我が国の航空戦力の機動力を向上させることが可能となります。

なお、その防衛力は基盤的防衛力の範疇であると考えます。

航空母艦では駄目だと言うのなら、せめて災害用として原子力防災空母を整備し、それを海上自衛隊に配属させ運用経験を積んでおくべきです。