核を持つ脆弱な大国

核を持つ脆弱な大国

ロシアのミサイルがポーランドに着弾し、2名が死亡したらしい。

AP通信によると、ロシア軍がウクライナへ向けて発射したミサイルが国境を越え、隣接するポーランド東部の村に着弾したとのことです。

ロシア国防省は「意図的な挑発行為である」として、報道を否定しています。

そりゃぁ、否定せざるを得ないでしょう。

ポーランドはNATO(北大西洋条約機構)加盟国です。

条約の5条には、一つの加盟国に対する攻撃をNATO全体への攻撃とみなし、加盟国は攻撃された国の防衛義務を負う集団的自衛権を行使できると謳われています。

とはいえ、集団的自衛権は「集団安保による軍事的措置」が機能するまでの緊急措置ですので、問題はNATOとしての対応です。

加盟国の国民がロシア軍の攻撃により死亡したとなればNATO結成以来はじめての事例となりますので、その対応次第ではNATOの集団安全保障体制の実効性が問われかねません。

だからといって、ロシア・ウクライナ戦争が、ロシア・NATO戦争に発展するのも困ります。

ただ、ロシア・NATO戦争といってもその戦力差は歴然で、ロシアに1%の勝ち目もありません。

それだけに、追い詰められたプーチン大統領に核使用の決断を迫ることになるのではないでしょうか。

ここは、ポーランドとNATOの冷静な対応を望みます。

さて、それにつけても益々もってロシアは危機的状況に追い詰められているようです。

今のところ、ウクライナとの和平が実現する見込みは立っていませんが、仮にウクライナとの戦争に勝利できたとしても、ロシアは欧州連合やG7の経済圏から切り離され、経済的に困難な状況に直面します。

今回のウクライナとの戦いにより、その軍事力の脆弱さが白日のもとに晒されたわけですが、例え戦争が終結しても、核と資源と大国としての威厳だけをもった経済小国として茨の道を歩むことになります。

かつてオスマン帝国が「ヨーロッパの病人」と呼称されましたが、いまやロシアが「ユーラシアの病人」になってしまったのか。

歴史の理(ことわり)とはいえ、どんな帝国も永遠には続きません。

とくに誤った戦争によって急速に衰退する場合、混乱と不安定化をもたらすことは避けられないでしょう。

ロシアがこの運命を避けるには、もう遅すぎるような気がします。