気候変動と地政学

気候変動と地政学

世界保健機関(パンデミック・エピデミック担当)のシルヴィー・ブリアント氏によれば、気候変動によって新たな病気や感染症が起こりやすくなっているという。

彼女は「都市化と人々の将来的な移動がリスクを高め、そこに気候変動が加わると、世界の健康安全保障に対する大きな脅威の完璧なレシピのできあがりである」と警鐘を鳴らしています。

そして気候変動が感染症の半数以上を悪化させていると科学者たちが指摘しているとも。

どうやら気候が温暖化すると一部の病気は温かい気候を好むようです。

例えばコレラは非常に危険な病気ですが、そのバクテリアは水中の藻についています。

なので、水が温かくなるとこの藻が繁殖してバクテリアも増えていくことになります。

なるほど気候変動によってもしも洪水が発生すれば、水媒介の病気を拡大させることになりますね。

安心でない水には虫も寄ってくるでしょうから。

それに、病気を媒介する蚊が温かい環境を好むために、マラリア熱やデング熱がそれまで存在しなかった地域(アジア、アフリカ、南米)の高原地帯にまで広がっているのだとか。

なお、20年前には考えられなかったことですが、ヨーロッパでもデング熱が市中感染を起こしているという。

専門家に拠ると、病気を媒介する蚊が広まらないようにするには排出ガスを減らすことが必要になるそうです。

加えて、気候変動が進み気候が変わると、動物たちがより生活しやすい場所を求めて移動します。

つまり、それまで媒介動物の生息地にとどまっていたウイルスが人間に広まるきっかけをつくり、それが大規模なエピデミックやパンデミックにさえつながるというのです。

だとすれば、新型コロナもそうだったのかもしれません…

全てのウイルスが危険なわけではありませんが、この世には何十億ものウイルスが存在しています。

気候変動が進むことで、感染症のリスクをより高めてしまうのであれば、それなりの対処をしなければなりません。

一つ言えることは、私たち人類は他の動物とは異なって「備えること」ができるということです。

できるのですが、そこに政治が関わります。

現に、世界の気候変動問題はほとんど進展していません。

それどころか、ウクライナ戦争とそれに派生するエネルギー問題の混乱もあって、気候変動問題よりも伝統的な地政学リスクへの対処のほうが優先されるに至っています。

ここでもまた、気候変動や感染症リスクなどのグローバルな新しい問題と伝統的な地政学とが衝突しています。

実に厄介な問題です。