ミサイル防衛の限界

ミサイル防衛の限界

今日も北朝鮮のミサイル問題を取り上げます。

ご承知のとおり、ここのところ北朝鮮は過去に例を見ない頻度で弾道ミサイルを発射しています。

政府は「いかなる事態にも対応することができるよう緊張感をもって必要な対応に万全を期している…」と、お約束のテンプレフレーズを繰り返すばかりですが、その対応が本当に万全であると信じて疑わない日本国民などいるのでしょうか。

内閣官房の広報(HP)をみますと、次のように記載されています。

「北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合には、政府としては、24時間いつでも全国瞬時警報システム (Jアラート)を使用し、緊急情報を伝達します。Jアラートを使用すると、市町村の防災行政無線等が自動的に起動し、屋外スピーカー等から警報が流れるほか、携帯電話にエリアメール・ 緊急速報メールが配信されます。なお、Jアラートによる情報伝達は、国民保護に係る警報のサイレン音を使用し、弾道ミサイルに注意が必要な地域の方に、 行います」

「Jアラート」という“空襲警報”でミサイルの飛来をお知らせ頂くのは誠にありがたいことなのですが、問題は国土と国民を守るため、飛来してくるミサイルを迎撃してくれるのかどうかです。

「空襲警報を出すから、ちゃんと地下街や頑丈な建物に逃げてね…」では、あまりにも無責任ではないか。

各地域に用意してある公共シェルターに逃げてください、というのであれば理解しますが、我が国にはそのようなものは整備されていません。

であれば、日本本土に飛来してくるミサイルを迎撃してもらうほかないのですが、実際のところミサイル防衛には物理的な限界があります。

そもそもミサイル防衛というのは、真正面から自分方向に飛来してくるミサイルを迎撃することはできても、左右何百キロも離れた場所に向かって跳んでいく敵ミサイルを迎撃することは不可能なのでございます。

なぜなら敵ミサイルの速度と、こちらの迎撃ミサイルの速度はほとんど同速度かそれ以下だからです。

迎撃システムは、敵ミサイルの向かう方向と速度を確定でき次第、それをロックオンして迎撃ミサイルを発射するわけですが、迎撃ミサイルが空気抵抗のない10~20キロ高空まで上げる間、空気抵抗と地球引力による低速上昇時間数分を要してしまうことになります。

その数分間に敵ミサイルは空気抵抗もなく、地球引力と遠心力とが一定の均衡を保つ安定した機動を高速で飛来してきます。

その速度は秒速4〜5キロなので、1分間で2〜300キロ先まで跳んでいくわけです。

即ち、こちらが発射した時点で既に敵ミサイルはほぼ我が国本土の上空近くにまで飛来しており、日本の迎撃ミサイルが10〜20キロの真空地帯に上昇した時には敵ミサイルは目標近くにあるので、それから日本の迎撃ミサイルが追いかけることはできないということです。

よって現時点では、ミサイル防衛による有効な迎撃範囲は極めて小さく、日本本土全体を護るためには日本本土のあらゆる場所にミサイルを何十万機と満遍なく備え付けなければならない、という話になります。

仮にそうしても、ある緊要地点に敵が集中攻撃すると逆に重要地点から破られてしまうという結果にもなりますので、実に悩ましい問題です。

現状、日本全土を守りきれない以上、公共シェルターを整備していくことが必要だと思います。

例えば、地上を走っている鉄道を連続立体交差事業等で地下化し、地下化された各駅の下にさらに公共シェルターを整備していくのはどうでしょうか。

鉄道の地下化に伴う都市計画効果(まちづくり効果)が発揮されつつ、シェルターという防衛施設も同時に整備されることになりますので。