日本の経済成長率が低く予測される理由…

日本の経済成長率が低く予測される理由…

きのうOECD(経済協力開発機構)から世界の経済見通しが発表されました。

上のグラフのとおり、2021年の世界全体の経済成長率見通しは3月時点から0.2%上方修正され5.8%となりました。

米、欧、中の巨大経済圏についても、それぞれに力強く成長すると予測しています。

ワクチン接種の普及スピードが加速する地域を中心に、コロナ・パンデミックからの回復が力強さを増すとみているようです。

そのうえでOECDは、力強く経済回復していく地域とそうでない地域の格差が拡大していくことの懸念を表明しています。

多くの国や地域で置き去りになってしまう人々の生活水準が、ポストコロナ時代も長期にわたって危機前の水準に戻らないことの可能性を指摘しています。

このように言うと発展途上国の問題であると思われがちですが、いまや先進国クラブからはじき出されつつ日本も例外ではありません。

上記のグラフをみても明らかなように、3月時点に比べ経済成長率が下方修正されている先進国は日本だけです。

むろんOECDは先進国の中でもワクチン接種のスタートが4ヶ月も遅れた日本は集団免疫の獲得に時間を要するがゆえに経済の回復までにかなりの時間を要すると推測しているのでしょう。

IMFも同じような成長見通しを立てていますが、彼らが日本の経済成長力の弱さを予測しているのはワクチン接種の遅れだけではないと思います。

世界経済を牽引していくとされている米欧中ではワクチン接種が進む一方で、政府による投資拡大(歳出拡大)という積極財政がとられています。

バイデン・プランという巨額の投資計画を既に表明している米国は言うに及ばず、共通通貨国(独自通貨を発行できない国々)の欧州においても、例えばあの緊縮の権化たるドイツ政府のメルケル首相がインフラ投資を中心に財政支出拡大の必要性を説いています。

ドイツは競争力がありすぎてユーロ各国から文句を言われておりますが、それでもまだインフラ投資の必要性を唱えているいたりはさすがです。

交通インフラこそが経済競争力の根源であることを理解している証左です。

要するに、ローンレンス・サマーズ元米国財務長官の言う「長期停滞」に陥らないように、先進各国が財政拡大策に転じているにもかかわらず、長期停滞の権化たるデフレ国・日本の政府は未だ財政政策の転換をためらっています。

OECDやIMFが日本経済の成長力を低く見積もっている理由はそこにもあるように思います。