先日もまた、「これ以上、日本政府が国債を発行すると、やがて日本国債は紙屑となるため、今後は日本の資産を外国に移す者が増えていくことになる…」という珍説を真顔で唱えている人がいました。

まことに珍説は絶えないもので、例によって「財政破綻論」の一つです。

まず「政府の国債が紙屑になる…」とは、おそらくは国債の価値がゼロになることを意味しているのでしょうけれど、そんなことはあり得ません。

日銀（中央銀行）という最強にして最後の借り手（買い手）が存在する以上、国債を紙屑にすることのほうが難しい。

中央銀行の国債買い入れは、キーボードで金額（数字）を打ち込むだけで決済されます。

いつも言うとおり、日銀は海外から金貨や銀貨をかき集めて国債を買い入れているわけではありません。

それに、逆に聴いてみたいのですが、日本の資産って海外に移せるんですか？

どうやって日本の土地を外国に移すのでしょうか？

あるいは日本円を外国に持って行って使うことができるとでも本気で思っているのでしょうか？

土地や円を売り払って外国に行くのであれば、その土地や円を国内で買ってくれる他の誰かが必ずいるはずです。

なので円や土地などの資産が外国に流出することなどあり得ない。

むろん、日本円が紙屑になることもあり得ない。

いつも思うのですが、本当に日本円が紙屑になると思っているのであれば、その人は銀行預金など保有する金融資産をすべて外貨建てにするべきです。

それに政府の負債がどうしても気に食わないのであれば、自分の財布の中に入っている紙幣（日銀券）など燃やしてしまえばいい。

本当に燃やすと犯罪ですが、理屈とすれば、そうすることで日銀という政府の子会社の負債が減ることになります。

バランスシート上、日銀券（おカネ）は日銀の負債に計上されるものですので。

いや、燃やさずとも、本気で日本政府が破綻し日本円が紙屑になると信じているのなら、さっさと円を外国通貨に両替すればいい…

といっても、できるはずもありません。

なぜなら日本国に居住している以上、日本円を持っていなければ財やサービスを購入することができず、税金も支払えないからです。

ドルのみで生活している人など、日本国内に一人もいない。

駐日アメリカ大使だって日本円を持っているはずです。

そもそも論ですが、これ以上、国債を発行しないことのほうが、むしろ恐ろしい結果をもたらすことになります。

国債を発行できなければ、政府は支出を拡大できません。

なのでデフレを脱却することができず、やがて国内の供給能力が大きく毀損され、本当の意味で発展途上国になるわけです。

仮に何かの拍子でデフレが解消されたとしても、安定的に経済成長していくためには、政府による安定的な通貨発行が必要になります。

そりゃそうですよね。

経済成長とは所得が増えていく現象ですので、世に出回るおカネ（紙幣）の量も必然的に増えていくことになります。

おカネ（紙幣）は、政府（中央銀行）によって発行されるものです。

要するに、政府が創出する負債（おカネ）を中心にして、私たちの国民経済は成り立っています。

ゆえに、経済成長とともに政府の負債も増えていくのがスタンダードな状態なのでございます。

ゆえに日本政府の負債は、明治政府が成立して以来すでに3973万倍に増えていますが、ご存知のとおり一度も破綻（デフォルト）したことなどありません。