矢野論文が嘘であることを示すグラフ

矢野論文が嘘であることを示すグラフ

中央政府とは異なり通貨発行権のない地方自治体にとって、地方税(市税や県税)と起債は自治体運営上の主要な財源です。

むろん、それだけでは多様な行政ニーズに対応することはできませんので、地方自治体は国からの譲与税、国庫支出金(紐付き補助金等)、地方交付税交付金等の追加財源を必要にしています。

とりわけ充実して欲しいのは「地方交付税交付金」です。

自治体固有の収入額(基本財政収入額)から支出額(基本財政需要額)を差し引いた金額(不足分)が地方交付税交付金となります。

ただし、いつも言うように「地方交付税交付金」は国による財政救済策(自治体の生活保護費)ではありません。

そもそも地方税だけで財源を確保できる自治体など日本国内に一つも存在せず、ゆえに地方交付税交付金は全国の地方自治体が財源を確保できるように国家が計画的に用意しているおカネなのです。

毎年、地方交付税の総額は『地方財政計画』で示されています。

その原資は、所得税及び法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%、地方法人税の全額によって充てられています。

ご承知のとおり、税収は名目GDPに相関しますので、名目GDPの伸び率が鈍化するデフレ経済下では地方交付税の原資が増えることはありません。

増えないがために、国は国債発行と地方自治体に臨時財政対策債を発行させることの合せ技で地方交付税交付金の原資不足を賄っています。

通貨発行権をもつ国(中央政府)が税収を財源にしているあたり、まさに「貨幣のプール論」です。

昨今、地方自治体の首長たちの多くが、国に対して「税源の移譲」を求めていますが、べつにそんなことをせずとも、国(財務省と総務省)が地方交付税交付金を充実してくれるだけで自治体財政はだいぶ豊かになります。

せめて「基準財政需要額」を算定する際の法定単価を引き上げてくれるだけでいい。

(地方交付税交付額 = 基準財政需要額 − 基準財政収入額)

その財源は、むろん国債発行でいい。

先日、財務省の現役事務次官の矢野氏は文藝春秋に次のように述べました。

「日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかがわからない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです。このままでは日本は沈没してしまいます」

つまり矢野次官は「やがて日本は巨額な債務残高という大きな氷山にぶつかって、タイタニック号のように沈没するぅ〜」と警鐘をならしています。

ここでいう「沈没」とは、日本政府がデフォルト(債務不履行)するか、もしくは日本国債が紙屑同然になることを指しているのでしょう。

もしも矢野次官が言うように、本当にその可能性が高くなっているのであれば、政府が発行する国債の価格はとっくに暴落(金利は上昇)していなければ辻褄が合わない。

しかしながら冒頭のグラフをご覧のとおり、日本政府の債務残高は増え続けているものの、その一方で国債価格は上昇(金利は下落)し続けています。

このことについて未だ矢野次官からの具体的な説明はない。

説明どころか「霧に包まれているせいで気づいていない」と言って逃げまわっています。

こういう財務官僚が幅を利かせているかぎり、地方自治体の財源が潤沢になることなど絶対にないでしょう。