先進国の中間層は新自由主義によって破壊された

先進国の中間層は新自由主義によって破壊された

トマ・ピケティが提示した r>g の不等式は、統計的に証明されています。

「r」は資本収益率、「g」はGDP成長率です。

つまり、資産運用によって生み出される利益が、労働によって得られる所得よりも収益率が大きいために、資本収益率がGDP成長率を上回るわけです。

結果、資産格差と所得格差が拡大することになります。

こうした社会では、企業の内部留保や株主配当が増大するのに反比例して実質賃金が減少します。

上記に示した折れ線グラフは、いわゆる「エレファント・カーブ」と言われるものです。

エレファント(象さん)の胴体と鼻を描いたような曲線を描いていることからそのように呼ばれています。

横軸に「世界の所得分布の百分位」、縦軸に「実績所得の累積増加率」を示しています。

つまり横軸は、右に行けば行くほど富裕所得層となり、左に行けば行くほど貧困所得層になります。

おそらく横軸の0〜5あたりは、アフリカ中西部の貧困層になるのでしょう。

エレファント・カーブをみると明らかですが、グローバル経済によりもっとも所得を減らしたのは、我が国を含めOECD諸国の中間・低所得層です。

反対に存分なる「利」を食らったのは、中国などの新興国の中間層と、一握りのグローバル投資家や経営者たちです。

彼ら彼女らは1998年から2008年の10年間で、なんと7割以上も所得を増やしているわけですから凄い。

当時、労働者と経営者の所得格差は最大で1対300とも言われていましたが、どんなに労働能力に差があったとしても、300倍もの格差を合理的に説明することなどできないはずです。

我が国も例外ではなく、この20年以上もの間、労働分配率は下がり続けてきました。

労働分配率の低下は搾取率の増加と言っていい。

世界中を搾取経済に染め上げた経済思想こそが、まさに新自由主義(ネオリベラリズム)です。

新自由主義に基づくグローバル経済により、とりわけ先進国における雇用が徹底的に破壊され、中間所得層を形成してきた正規社員たちは、いわば雇用の保護のない荒海に放り出されることになりました。

企業は企業で、グローバル経済を勝ち抜くために人件費カットによる四半期利益の追求に徹しました。

結果、正規雇用から非正規雇用へ、非正規雇用からフリーランスへ、そして労働者に不利益な労働関係法の解釈、労働組合の弱体化など、弱者救済のための社会立法はとめどなく縮小していったのです。

日本維新の会が典型的ですが、経済的弱者を増産させる新自由主義を推進してきた者たちは「最後はセーフティーネットとしてのベーシックインカムがある」と言って開き直る、まさに竹中平蔵の世界です。

このまま新自由主義がはびこり続ければ、ベイシックインカムによる奴隷制社会が出現します。

それに立ちはだかることのできる真っ当な思想こそが保守思想です。