敵は新自由主義(ネオリベラリズム)

敵は新自由主義(ネオリベラリズム)

自民党の総裁選挙が行われています。

候補者のひとりである岸田さんが立候補を表明された際、「小泉改革以降の新自由主義的政策を転換する…」と主張されたのが私には印象的でした。

因みに新自由主義とは「自由競争市場こそが効率的な資源配分をもたらし、必ずや経済厚生を最大化する」という教義(ドグマ)です。

このドグマによれば、政府による市場介入は悪なので…
①小さな政府(公務員削減)
②財政収支の縮小均衡(健全財政)
③規制緩和
④自由化
⑤民営化
…が絶対的な善となるわけです。

①②③④⑤の政策を総称して「構造改革」と呼びます。

岸田さんが『新自由主義』をどのように定義されているのかはわかりません。

よって、氏の言う「新自由主義的な政策」が具体的にどの政策を指しているのかぜひ知りたいところですが、少なくとも岸田さんは上記②の「健全財政」の必要性を説いておられますので、本当に正しく理解されているのか疑わしい。

ひょっとすると、小泉改革なるものが冷静に批判されはじめた昨今の世論の空気に、たんになびいているだけかもしれません。

それに岸田さんは「小泉改革以来の…」と言うけれど、これも間違いです。

我が国で新自由主義的政策がはじまったのは1980年代の中曽根内閣からです。(大平内閣からという意見もある)

正しく言えば、小泉内閣は新自由主義的政策(構造改革)をもっとも露骨に、そして過激に行った内閣です。

さて、構造改革は経済活動にとって必要な諸規制を撤廃するため、かえって市場競争の安定性を損ねます。

そうした弱肉強食の市場競争に晒された企業は果てなき合理化を追求するので、迷うことなくまっさきに人件費に手をつけます。

ゆえに雇用が不安定化します。

竹中平蔵さんら構造改革派に言わせると「正規社員」は既得権益そのものなのだそうで、だからこそ彼らは雇用規制を撤廃させ「派遣社員」を世に溢れさせたわけです。

正規社員が減り非正規や派遣社員が増えたこと、そして弱肉強食の市場競争に晒され体力を失った中小零細企業も雇用を縮小したことで、社会を支える「中間所得層」が徹底的に破壊されました。

消費需要を支える中間所得層が支出を減らさざるを得ず、加えて株主利益(四半期利益)を優先しなければならない企業は投資需要を抑制しています。(GDPの大部分は消費と投資です)

そして最後の砦である政府が緊縮財政によって政府支出(政府による消費と投資)を抑制しているのですから、国内経済が総需要不足(デフレーション)に陥って当然です。

いつも言うように、デフレは株式投資など資本収益で暮らす人たちにとっては暮らしやすい経済情勢ですが、所得(GDP)で暮らす多くの国民にとっては最悪の経済情勢です。

デフレは国民を貧困化させ、国を発展途上国化させるのです。

今まさに我が国はデフレの真っただ中にいます。

新自由主義的政策(構造改革)を転換させないかぎり、デフレを払拭させることは絶対に不可能です。