朝令暮改な厚労省通知

朝令暮改な厚労省通知

今からちょうど2年前の2019年9月26日、厚生労働省は「再編統合へ議論が必要」とする全国の公立・公的病院を公表しました。

なんとその中で、本市中原区にある市立井田病院が「再編統合」の対象とされました。

理由は「他病院と類似かつ近接している」あるいは「車で20分以内に、救急医療や周産期などの6項目で類似機能がある他病院が近接している」とする国の定義に合致しているからだ、ということでした。

要するに、近くの民間病院に類似機能があるんだから「井田病院さんにはそんなに病床は要らないでしょっ…」だから仕事も減らして病床を再編(削減)するべきだ、と言うわけです。

ここで厚労省が言う「再編」というのは、どう考えても「削減」であることは明らかで、まさにネオリベラリズム(新自由主義)に基づく構造改革です。

「県と市の仕事が重複しているのは無駄だ」という、どこぞやの地域政党と同じ発想です。

いつも言うように、そもそも新自由主義という思想体系には「不確実な危機」という概念がありません。

私は不確実な危機にどう対処するのかが行政の最大の役割だと思っています。

そして、その役割を最大限に発揮するためには、常に冗長性や余裕というものを維持することが必要です。

消防員たちが火災という危機に備え、いつでも出動できる体制を整え冗長性と余裕をもって待機しているのと同じです。

もしも消防員が平時において火災とは無関係なデスクワークに追われていたならば、いざというときのための訓練もできないし、火災発生時の出動も遅れます。

このように言うと必ず「そうは言っても費用対効果が大事ではないか」みたいに反論する人たちもいますが、冗長性と効率性は決して矛盾する概念ではありません。

冗長性がすべて無駄というなら、この世に「〇〇保険」などという商品は存在していないはずです。

例えば「がん保険」などは、結果としてがんにならなかった人から見れば無駄な出費だったということになります。

さて、そんな厚生労働省がこんどは、新型コロナ感染の再拡大に備えて全国の自治体に「医療体制の再検討」を要請しています。

2年前は「減らせっ」と言っていたのに、こんどは「ちゃんと病床を確保しろ」「いつでも野戦病院を整備できるようにしろ」と、9月14日付けで全国の都道府県に通知を発しています。

具体的な計画の見直し方については月内にも改めて通知するらしいのですが、そのまえに「つい2年前までは全く危機を想定していませんでした」という反省とお詫びがあってしかるべきではないか。

もちろん、過ちを改むるに憚らないことは実に良いことではありますが、まるで何事もなかったように、そして舌の根も乾かぬうちにこっそりと意見を変えるのはいかがなものか。

自分たちにとって都合の悪いことはすべて無視するという姿勢は、昨今のエリートたちの実に頂けないところです。