正しい貨幣観をもったリーダーがほしい

正しい貨幣観をもったリーダーがほしい

衆議院の任期満了を前に菅総理の自民党総裁としての任期が満了となります。

解散権を行使できない内閣ほど惨めなものはなく、結局このまま今月17日に自民党総裁選挙が告示(投票は29日)されることになりました。

報道のとおり、菅総理が総裁選挙への立候補を断念したことから自民党内の政局が流動化しています。

今のところ本命とされる岸田前政務調査会長がいち早く立候補を表明しており、ほか高市早苗氏、石破茂氏、河野太郎氏らが立候補に必要な20人の推薦人の確保に向けて動いているらしい。

さっそく、今朝のフジテレビの政治番組に岸田さんが出演されていました。

司会者やコメンテーターからの質問に対し、岸田さんはコロナ対策や医療対策のほか様々な政策課題についてお答えになっていました。

しかしながら例によって抽象的な言葉の羅列が中心で、質問者から具体性を指摘されると「全体をみて総合的な観点で判断し改善していきたい」みたいな答弁で煙に巻いて逃げてしまう。

実に残念です。

もっと残念だったのは、財源について質問されると「それは後々に議論すべきテーマだ」と言っておられたことです。

どうして「デフレ経済の直中にある現在の日本に深刻な財政問題など存在していない」と言えないのか。

結局、岸田さんも主流派経済学と同じように「貨幣」に対する正しい概念をもっておられないということです。

主流派経済学における貨幣の概念は「商品貨幣論」です。

商品貨幣論とは、貨幣(おカネ)は貴金属などの内在的価値ゆえに交換手段として使われる「モノ」である、という論です。

要するに、貨幣は支払いの際に受け取られるために貴金属による裏付けを必要とするのだ、と彼ら彼女らは言うわけです。

たしかに歴史上、政府が自国通貨の裏付けとして相応の「金」や「銀」などを保有(準備)していたことがあるのは本当です。

しかしながら、私の生まれた昭和46(1971)年の8月、いわゆるニクソン・ショックで米国がドルと金の兌換を停止して以来、主権通貨は貴金属の裏付けなど持っておりません。

では、金や銀などの「モノ」によって裏付けられてない貨幣が、なぜおカネとして受け取られるのでしょうか?

この質問に商品貨幣論が答えるのは極めて難しい。

むろん岸田さんも答えることができないはずです。

結論から言うと貨幣(おカネ)とは、何らかの貴金属に裏付けられた「モノ」ではなく、信用と負債の社会的関係の一形式にすぎません。

お札には、その発行者である日銀のマークが入っており、またはっきりと「日銀券」とも印刷されております。

則ち、そのお札は日銀が発行した「負債」であり、それを保有しているものにとっては「債権」の証であることを示しています。

なので、政府の負債が心配でたまらず、少しでも減らしたいと考えている日本国民がいるのだとしたら、その人はご自身のお財布に入っている日銀券(お札)を日銀に持ち込んで、ぜひ債権放棄してください。

(むろん、そんなことをすると日銀が迷惑しますのでやめてください…)

ただ、理屈としてはそういうことです。

日銀は政府が発行する国債を担保に現金(日銀券)を発行しています。

ゆえに政府の国債発行残高とは、たんに政府の通貨発行残高なのでございます。

いつも言うように、インフレ率が許すかぎりにおいて、政府の通貨発行量に上限はありません。

ぜひ、こらから行われる自民党総裁選には、こうした貨幣の真実をちゃんと理解されている人に立候補してもらいたい。