人口減少時代、都市は成長できるか――
この問いは、これからの川崎市にとって避けて通れないテーマです。
川崎市はこれまで人口増加とともに発展してきましたが、転換点が近づいています。
生産年齢人口はすでにピークを迎え、総人口も2030年代半ばにピークを迎える見込みです。
特に内陸から北部にかけては、高齢化が“速い”という特徴があり、地域ごとの構造変化が急激に進みつつあります。
人口構造が変わるということは、都市の前提条件が変わるということです。
したがって、これまでと同じ発想では都市は維持できません。
例えば、最新の将来推計では、中原区をはじめ市の内陸から北部にかけて、75歳以上人口が速いペースで増加します。
中原区では、75歳以上人口は2020年を100とした指数で、2045年に約170、2050年には約200に達する見込みです。
これは単なる高齢化ではありません。
構造が短期間で急激に変わるという意味での高齢化です。
一方、川崎南部はすでに早い時期から高齢化が進んできたため、今後の上昇は比較的緩やかです。
市の内陸住宅地では高齢化がこれから急速に進むのに対し、既成市街地では先行して進んできたという違いがあります。
都市政策にとって本当に重要なのは、総量ではなく速度です。
なぜなら、速度が速いほど制度・インフラ・医療・住宅の対応が追いつかなくなるからです。
この問題は人口そのものではなく、都市が医療・インフラ・住宅・産業を支え続けられるかという供給能力の問題です。
次に大きな課題となるのが老朽インフラです。
上下水道、道路、公共施設など、多くのインフラが更新期を迎えています。
例えば公共施設の延命化を図ろうとしても、構造図面が残っていないケース、図面があっても構造実態と異なるケースが少なくありません。
とくに上下水道、道路、橋梁などの社会インフラについては、維持管理の問題ではなく、将来の都市機能そのものに関わる問題です。
インフラ更新は単なるコストではありません。
更新を先送りすればするほど選択肢は失われ、将来の都市機能に不可逆的な影響を与えます。
これは供給能力を維持・強化するための投資です。
人口が減る時代において重要なのは、「需要が減るから投資しない」という発想ではありません。
むしろ逆です。
人口減少時代は、投資した都市と投資しない都市の差が拡大します。
つまり、成長するかどうかは人口ではなく、供給能力で決まります。
したがって、これからの川崎市に必要なのは、官民を挙げた供給能力向上のための投資です。
これはインフラ投資だけを意味しません。
産業基盤、都市基盤、生活基盤を一体として強化していくことを意味します。
まちづくりの観点では、投資を呼び込むための「予見」をどう作るかが重要になります。
投資は現在ではなく、将来の見通しに基づいて行われるからです。
基本軸となるのは駅前広場の整備です。
駅前は都市の意思を最も明確に示す場所です。
駅前広場の整備は、人流、交通結節、再開発の可能性を固定し、民間投資の方向性を示します。
これは都市の成長予見をつくる政策です。
駅前整備は単なる空間整備ではなく、「この都市はここを伸ばす」という宣言になります。
しかし、駅前だけでは投資は持続しません。
もう一つ必要なのが、生活圏としての需要の継続性を示すことです。
そこで重要になるのが、中学校区単位での情報提供です。
これは生活圏の将来像を見える化する政策です。
具体的には、次のような取り組みが考えられます。
・人口構成・将来人口の見通しの提示
・学校、医療、子育て、商業など生活機能の可視化
・公共施設更新やインフラ整備の予定の共有
・地域の都市計画・土地利用の方向性の明示
・住宅供給や再開発の動向の整理
・移動手段(交通・徒歩圏)の情報提供
・高齢化への対応方針の提示
これらを学区単位で体系化し、定期的に更新・公開する仕組みを整えることで、「ここで暮らし続けられる見通し」を制度として示すことができます。
これは市民向け情報であると同時に、住宅投資・不動産投資にとって極めて重要な基礎情報になります。
つまり、これからのまちづくりは二つの予見をつくることになります。
駅前は都市の成長予見。
生活圏は需要継続の予見。
この二つが揃うことで、民間投資は動きます。
人口減少は終わりではありません。
都市が選別される時代の始まりです。
人口減少は制約ですが、成長を否定する条件ではありません。
その分岐を決めるのは、供給能力を高める投資と、将来の見通しを示す政策です。
川崎市がこれからも成長を続けるためには、人口ではなく供給能力を基準に都市政策を設計していく必要があります。
そしてその中心にあるのが、官民を挙げた投資と、予見をつくるまちづくりです。


