中国経済の足元を示す政府版PMI(購買担当者景気指数)を見ると、景気は依然として弱く、デフレ圧力から完全には脱していない状況が読み取れます。
背景には、いくつかの明確な減速要因があります。
第一に、供給過剰です。
過去の投資主導型成長の結果、製造業では過剰設備が常態化し、企業は新たな設備投資に慎重になっています。
第二に、不動産市況の軟化です。不動産は中国経済の中核でしたが、価格下落と販売不振が続き、地方財政・金融・家計のすべてに影響を及ぼしています。
第三に、消費の弱さです。
コロナ後の一時的な消費回復の反動もあり、消費財需要は力強さを欠いています。
こうした状況の中で、中国政府にとって財政政策による景気刺激は不可欠と考えられています。
3月5日から開催される全国人民代表大会(全人代)では、財政面から景気を下支えする新たな政策が打ち出されると見込まれます。
しかし、ここで実に興味深いのは、中国経済の問題は景気循環ではなく、中国の政治体制にあるという点です。
それこそが、なぜ中国経済が内需主導型経済に移行できないのかを理解する上での重要ポイントです。
内需を拡大するためには、賃金の上昇が不可欠です。
ところが、賃金が上昇し、中間所得層が豊かになり、労働者の地位が向上していくと、共産党一党独裁体制に対する異議を唱えたり、様々な政治的要求が高まっていく可能性があります。
また、社会保障制度が整っていない中国では、国内消費を拡大することは容易ではありません。
社会保障が不十分なままでは、人民は将来や老後のために貯蓄を優先し、消費を抑制せざるを得なくなります。
こうした政治体制の特性が背景にあります。
その結果、中国では景気が弱い局面で財政を拡大しても、資金は消費ではなく投資に向かいやすくなります。
インフラ、設備、不動産への投資が先に動き、供給がさらに増えます。
投資中心の成長が続けば、需要を上回る供給が生じます。
過剰となった生産は輸出に向かい、世界市場での価格競争を激化させます。
近年の米中摩擦の背景には、この問題があります。
私たち日本国民は、労働者の賃金が上がって経済が成長することで政治体制がひっくり返るなどと想像しませんが、それは我々が先進民主国家だからです。
残念ながら、中国はそうではないのに資本主義化だけしてしまった現状があります。
内需拡大とは、単に財政支出を拡大することではありません。
家計の所得を高め、人々が将来不安を過度に意識せずに消費できる環境を整えることです。
すなわち、中国経済の最大テーマは、投資中心の成長から、賃金と消費を中心とする成長へ移行できるかどうかにあります。
そしてそれは、経済政策だけで完結する問題ではないのです。


