尻手黒川線トンネル貫通が示す、道路インフラの価値

尻手黒川線トンネル貫通が示す、道路インフラの価値

先日、川崎市を南北に貫く幹線道路、尻手黒川線の一部となるトンネルが貫通しました。

本工事は2023年10月に着手され、2025年2月からトンネル掘削が開始されました。

市街地直下を掘り進む難工事であり、想定を超える脆弱な地盤や湧水に直面しながらも、さまざまな対策工事を積み重ねた結果、2026年1月21日に貫通に至りました。

トンネルの完成により、麻生区の柿生交差点周辺における慢性的な渋滞の緩和が期待されています。

一見すれば「交通が少し便利になる工事」と受け止められるかもしれません。

しかし私は、この事業を、もっと大きな文脈で捉えるべきだと考えています。

私は初当選以来、事あるごとにインフラの重要性を訴えてきました。

とりわけ、交通インフラのなかでも道路整備は、街づくりの根幹です。

道路は、交通流を円滑化するためだけの施設ではありません。

災害時には避難路や救援路となり、火災発生時には延焼を遮断する空間として機能します。

さらに、上下水道管やガス管、光ファイバーケーブルなどの公共公益施設を収容する基盤でもあります。

中央分離帯や沿道の緑化によって、都市の環境形成にも大きく寄与します。

都市計画道路をはじめとする幹線道路の整備は、沿道の宅地開発や都市開発を促進し、都市全体の潜在力を引き上げます。

逆に言えば、道路網が貧弱な都市は、都市間競争において不利な立場に置かれ続けることになります。

私のこれまでの議会質疑においても指摘してきたとおり、川崎市における4車線の市道延長は、横浜市のおよそ5分の1にとどまっています。

都市計画道路の進捗率についても、本市は政令指定都市の中でも、特に大都市の中で低い水準にあります。

それでも川崎市が一定の発展を遂げてきたのは、東京・横浜という二大都市、すなわち巨大な消費地に挟まれた地理的条件を享受してきたからでしょう。

しかし、その地理的利点に加えて、もし道路整備への適切な投資が行われていたならば、現在の川崎市は、より大きな発展を遂げていたはずです。

この点は、まことに残念と言わざるを得ません。

もっとも、都市計画道路などの幹線道路整備には、長期間を要する用地買収が不可避であり、これまでの遅れを今から一気に取り戻すことは容易ではありません。

であるならば、できるだけ用地買収に手間取らず、かつ経済効果の大きい基幹道路の整備に、戦略的に取り組む必要があります。

尻手黒川線のトンネル整備は、まさにその象徴的な事例です。

平面交差点の改良だけでは解消できなかった交通のボトルネックに対し、地下を活用することで交通流を分散させ、都市機能そのものを更新していく。

これは「便利さ」の話ではなく、都市の構造を一段引き上げる投資なのです。

また、東日本大震災の復旧過程において、東北縦貫道や常磐自動車道が果たした役割を見れば、高速道路が持つインターチェンジのアクセス制御機能、輸送力、そして速達性の重要性は明らかです。

本市を縦貫する道路ネットワークの形成は、平時の経済活動のみならず、有事・災害時の都市の耐久力を高めるうえでも欠かせません。

私は、こうした問題意識から、これまで繰り返しインフラ投資の重要性を訴えてきました。

しかし近年、インフラの価値を正面から語る議員が少なくなっていることに、日本国民として強い危機感を覚えています。

インフラ整備は、短期的な成果が見えにくい分野です。

だからこそ、政治が責任をもって、時間軸の長い投資を積み重ねなければなりません。

尻手黒川線トンネルの貫通は、その当たり前の真理を、あらためて私たちに示しているのではないでしょうか。