リアリズムから見た岡田克也氏の国会追及

リアリズムから見た岡田克也氏の国会追及

立憲民主党の岡田克也議員は、国会において高市首相が「台湾有事は存立危機事態になりうる」と答弁したことを取り上げ、「簡単に戦争を始めるかのような発言だ」と強く批判し続けています。

戦争を避けたいという思いそのものは誰しも共有できるものですが、国際政治をリアリズムで見たとき、岡田氏の追及は論点が大きくずれていると言わざるを得ません。

リアリズムの出発点は明快です。

国家は善悪や理想では動かず、自らが生き残れるかどうかを最優先に行動する、という前提に立ちます。

戦争をしたいかどうかではなく、巻き込まれざるを得ない状況に置かれているかどうかが行動を左右します。

この視点に立てば、「台湾有事が日本にとって重大な影響を持ちうるか」という問いは、感情や価値観の問題ではありません。

日本は東アジアに位置し、エネルギー輸送の海上ルート、在日米軍基地、日米安保体制を通じて、台湾海峡の安定と切り離せない立場にあります。

この現実を踏まえれば、「影響しうる」と答えることは、冷静な事実認識に基づくものです。

高市首相の答弁は、安保法制における「存立危機事態」という制度上の概念を説明したものです。

戦争を煽る発言ではありません。

それを「戦争を始める気なのか」と責めるのは、制度の説明と政治的姿勢を混同した議論だと言えます。

より問題なのは、岡田氏の追及が、日本が置かれている立場そのものを問うていない点です。

東アジアでは、中国が影響力を拡大しようとし、米国はそれを食い止めようとしています。

日本は、そのせめぎ合いの最前線に位置しています。

この関係は、誰が首相であろうと、誰が発言しようと、簡単に変わるものではありません。

本来、政治が向き合うべき問いは別にあります。

なぜ日本は、台湾有事と無関係ではいられない場所にあるのか。

その立場から距離を取る選択肢はあるのか。

あるとすれば、どれほどの負担やリスクを覚悟しなければならないのか。

もし距離を取れないのだとすれば、日本はどう振る舞うのが現実的なのか。

岡田氏の国会追及は、こうした問いを示さないまま、「そんなことを言うべきではない」と発言の是非だけを問題にしています。

これは、現実を変えるための議論ではなく、現実から目を逸らす議論だと言わざるを得ません。

リアリズムの観点から見れば、「戦争の話をするな」という政治姿勢こそが、最も危ういと言えます。

向き合うべき現実を言葉にすることを避ければ、国民は考える機会を奪われます。

合理的に判断したからといって、必ず安全な未来が保証されるわけではありません。

しかし、考えること自体を避ければ、誤った選択をする可能性は確実に高まります。

いま求められているのは、発言を糾弾する政治ではなく、日本が置かれている現実を正面から語り、そのうえで選択肢を示す政治ではないでしょうか。