副首都・献金禁止・定数削減――維新改革の“三つの罠”

副首都・献金禁止・定数削減――維新改革の“三つの罠”

日本維新の会が掲げる政策は、一見すると国民受けするものの、その実行には日本社会にとって危険な副作用が潜んでいます。

改革的な響きや表面的な魅力の裏側に、制度の根幹を揺るがしかねない矛盾があります。

たとえば、同党が推進する「副首都・大阪」構想についても、首都直下型地震などのリスクに備え、危機管理機能を大阪に分散させるという主張は、一見もっともらしく聞こえます。

しかし、地理的・地盤的な観点からすれば、大阪は副首都に不向きです。

大阪市内の多くは、もともと海や湿地帯を埋め立てて造成された土地であり、地盤が低く脆弱です。

南海トラフ巨大地震が発生すれば、津波や高潮によって深刻な被害を受ける可能性が極めて高く、副首都としては到底成立しません。

災害リスクを考慮するならば、首都機能分散の候補地は、東京・大阪いずれからも距離があり、かつ内陸部で災害リスクの低い地域――たとえば長野県や岡山県などを検討すべきです。

さらに、日本維新の会が主張する「企業・団体献金の完全廃止」も問題です。

政治をクリーンにするという理想を掲げていますが、現実には逆効果となる危険をはらんでいます。

政治活動には、選挙区事務所の運営費や人件費、車両維持費、政策広報費等々、有権者には見えづらい莫大な資金を要します。

合法的な献金が一切禁止されれば、資金調達は地下化し、不透明な「裏献金」や利害調整が横行する可能性が高まります。

かえって「ワイロ社会化」が進むおそれがあります。

真に必要なのは、献金禁止ではなく、透明性の徹底です。個人献金の上限額を見直すことや、企業献金の金額・出所をすべて公開し、国民が「誰が誰に献金しているのか」を明確に把握できるようにすることです。

これこそが現実的で健全な政治資金改革の方向だと考えます。

もう一つ、日本維新の会が掲げる「衆議院議員定数の1割削減」も、耳当たりの良いスローガンにすぎません。

以前のブログでも述べましたが、「日本の国会議員は多すぎる」という主張は事実誤認です。

国際比較をすれば、日本の国会議員数は人口10万人あたりで見て、イギリスやイタリアなど主要国よりもはるかに少なく、連邦制を採用する米国は州議会議員が日本の国会議員にあたりますので、我が国の国会議員数はG7で最も少ない水準にあります。

つまり「多すぎる」という認識自体が誤りなのです。

仮に議員数を減らしても、国会の総権力が縮小するわけではありません。

むしろ、議員一人当たりの権力が相対的に巨大化し、少数の政治家に利権や献金が集中しやすくなります。

これでは、先述の「献金禁止」と合わせて、政治の腐敗や独裁化を助長しかねません。

加えて、定数削減は地方の議席を削ることにつながり、地方の声が国政に届きにくくなります。

結果として、東京一極集中をさらに加速させ、地域衰退と少子化の悪循環を深めるおそれがあります。

改革の名のもとに掲げられる政策が、必ずしも社会を良くするとは限りません。

とりわけ、日本維新の会の政策には、「国民に響くスローガン」と「社会に潜む副作用」との落差が目立ちます。

副首都構想は災害に脆く、献金禁止は不透明な政治を招き、議員削減は民主主義の基盤を掘り崩します。

「改革」という言葉が人々の耳に心地よく響くときこそ、その内実を冷静に見極める眼が求められています。

それが、真に民主主義を守るための現実的な改革ではないでしょうか。