要綱行政を越えて_新百合ヶ丘総合病院の三次救急化へ

要綱行政を越えて_新百合ヶ丘総合病院の三次救急化へ

私の住む川崎市北部地域に位置する『新百合ヶ丘総合病院』は、地域の基幹病院として質の高い地域医療に加え、救急医療(二次救急)も担うなど、多くの市民の生命と健康を支えています。

同病院は、更なる地域医療への貢献に向けて、医療法の施設基準を満たし、神奈川県に対し救命救急センター、いわゆる三次救急の新規指定を申請していたのですが、許可権者である神奈川県は、地元合意が得られなければ許可は難しいとする趣旨の要綱を策定し、それを根拠に判断を引き延ばしてきたために、同病院はやむを得ず申請を取り下げるに至りました。

要綱行政については、最高裁判所が平成5年2月の判決において、「要綱に従わない者に制裁措置を背景として義務を課すことは違法な公権力の行使に当たり、法や条例によらず要綱によって新たな法的義務を課すことは許されない」との原則を明確に示しています。

また、要綱行政の弊害を防止するため、平成11年の地方分権一括法による地方自治法の改正(第14条第2項)において、地方自治体が民間部門に「義務を課し、又は権利を制限するには、条例によらなければならない」旨が規定されました。

よって、神奈川県の行為は、明らかに要綱行政の典型例と言わざるを得ません。

救命救急センターは、一刻を争う重篤患者を受け入れる最後の砦であり、その整備の遅れは市民の生命に直結する重大な問題です。

実際、救急需要は本市においても急増しており、救急出場件数は令和5年が87,591件、令和6年は89,114件といずれも過去最多を記録しています。

さらに、搬送患者の半数以上を65歳以上の高齢者が占めており、今後も少子高齢化の進行に伴い救急需要は増加が避けられないわけですが、この間、新百合ヶ丘総合病院が三次救急の申請を取り下げざるを得なかったという事実は、神奈川県の要綱行政が地域医療に及ぼした影響の大きさを示すものであり、その影響は決して小さくありません。

地域からの新百合ヶ丘総合病院への更なる期待が高まっているなか、去る7月10日、同病院は改めて神奈川県に対し申請を行うこととなりました。

これを受け、8月27日に開催された「川崎地域地域医療構想調整会議」で、ようやく神奈川県は同病院を救命救急センターとして指定する方向性を示しましたが、これは法的根拠のない要綱行政への批判を受けざるを得ない状況に直面し、その対応として方向性を示したものと考えます。

そこで私は、10月10日の川崎市議会において『新百合ヶ丘総合病院の救命救急センター指定を求める意見書(案)』を提案します。

川崎市議会としても、神奈川県に対して強い意思を表明することで、『新百合ヶ丘総合病院』の三次救急化を確実に実現し、市民の命を守ってまいります。