農家を守るか、崩壊を許すか_小泉政権と食料安全保障

農家を守るか、崩壊を許すか_小泉政権と食料安全保障

本日、自民党の新たな総裁が決まります。

自民党は少数与党とはいえ、総裁に選ばれる人物が総理大臣となることはほぼ確実です。

私の見立てでは、総裁選挙は決選投票にもつれ込み、最終的にはおそらく小泉進次郎氏が当選されるものと拝察します。

では、小泉進次郎内閣の誕生が意味するものは何でしょうか。

まちがいなく言えることは、我が国の食料安全保障の崩壊が決定的になるということです。

この断言は決して誇張ではありません。

小泉氏が主導するであろう農業改革の根幹は、国内農業の保護ではなく、「米国のビジネスのために行われる」構造的な改革だからです。

増産や輸出拡大といったスローガンの裏で、農家の所得を守る価格保証の仕組みは一切示されていません。

これでは農家は安心して生産を続けられず、この5年間で日本の農業は取り返しのつかない状況に陥ります。

以前にも申し上げましたとおり、コメ需要が増えているというニュースも、必ずしも喜ばしいものではありません。

それは国民の貧困化の裏返しだからです。

過去30年間で日本国民の所得中央値は約150万円も低下しました。

100kcalあたりの単価が非常に安いコメ(トマト約400円に対しコメは約15円)に依存せざるを得ない状況は、国民が大変貧しくなった結果であり、日本の食卓が危機に瀕している証拠です。

さらに、小泉進次郎内閣が父・純一郎氏の時代と同様の構造改革を進めるならば、その矛先はJA共済(保険事業)に向けられるでしょう。

郵政民営化が「かんぽ生命」を外資に開放したのと同じく、JA共済も米国の保険代理店と化すか、市場を奪われる可能性が高まります。

これは、日本の重要な金融インフラを外資に差し出すに等しい行為です。

また、米の流通においても深刻な変化が進んでいます。

ミニマムアクセス米(77万トン)について政府は「輸入義務がある」と説明しますが、実際は「低関税で輸入できる機会」にすぎません。

しかも、その半分程度(約35万トン)を米国から購入する密約の存在が取り沙汰されており、事実であれば国際ルール違反にほかなりません。

実際、当初は備蓄用や加工用とされた米国産米が、備蓄米を使い果たした後に「主食用」として市場に回され、国内市場への恒常的なルートが形成されつつあります。

ちなみに、政府やメディアは「日本の農業は過保護だ」などとことさらに主張しますが、数字を見ればその言は虚構であることが分かります。

農家一戸あたりの年間農業予算は、米国約1,000万円、ドイツ662万円、フランス480万円であるのに対し、日本はわずか135万円です。

むしろ日本こそ農業保護が極端に遅れているのです。

その結果、食料自給率は38%(カロリーベース)にまで落ち込み、後継者不足も深刻化しています。

日本の食料安全保障を維持し、農家に未来を示すための道は一つしかありません。

欧州方式の「農家個別補償」の導入です。

これは生産費をベースに「再生産可能価格」を保証する仕組みであり、価格下落やコスト高の際には政府が赤字分を補償(補填)します。

消費者が望む安価な価格(例:5kgで2,000円)と、農家が生産継続に必要な価格(例:5kgで3,500円)の差を埋めるのが政策の役割であり、その費用は年間2兆円程度にすぎません。

必要なのは、緊縮財政の総本山たる財務省の壁を打ち破る政治の決断です。

小泉進次郎内閣の誕生が日本農業崩壊の引き金となるのであれば、私たちは「農家個別補償」を掲げ、日本の食と未来を守る真の政治勢力を求めなければなりません。