本日、自民党の総裁選挙が告示されます。(10月4日投開票)
今回の総裁選において候補者の政策や公約を見る場合、注目すべき最大のポイントは「積極財政を行うかどうか」にあります。
経済を立て直し、賃上げを実現し、わが国の国力を回復させるためには、政府による大規模な財政支出が欠かせません。
ここで言う「積極財政」とは、景気回復や賃上げに必要な政府支出の拡大を、国債発行を財源に行うことを意味します。
逆に、経済危機や物価高に直面しても大胆な財政出動を避ける姿勢(財政収支の縮小均衡)は「緊縮財政」と呼ばれます。
さて、そのうえで小泉進次郎氏の公約をみてみましょう。
そこには「財政規律を意識しつつも、インフレ下の税収増を活用し、経済成長と国民生活の安定を実現」とあります。
財政規律!
ここで小泉氏が言う「財政規律」は、歴代政権の文脈に照らせば、ほぼ例外なく「プライマリーバランス(PB)黒字化」を意味します。
つまり、国債に頼らず、税収の範囲内で政策支出を賄うという方針です。
これを守れば、政府は大規模な国債発行ができず、必然的に歳出が抑制されます。
公約には「年収の壁の引き上げ」や「135兆円の国内投資」といった景気の良い言葉が並んでいるものの、その一点で結局は小泉氏の政策は「緊縮財政」であることが明らかです。
例えば「平均賃金100万円増」と言うけれど、政府による大規模な減税や給付金を伴っていない以上、実際には企業に賃上げを「お願い」するにとどまり、実効性を欠きます。
また「135兆円の国内投資」と言っても、ここで用いられているのは「公共投資」ではなく「国内投資」という表現です。
これは政府支出による直接の公共投資ではなく、民間の投資を促すことを指しています。
しかし、民間投資は需要の見通しが立たない限り拡大しません。
政府が先に財政出動をして需要を創出しないかぎり、企業は積極的な投資に踏み出せないのです。
さらに、公約にある「インフレ下の税収増を活用」という言い回しも問題です。
これはインフレによって自然増収した分を財源とするという発想ですが、規模は数兆円程度に限られます。
大規模な減税や給付金を支えるには到底足りず、実質的には「PBが黒字になったら余剰を使う」という逃げ道にすぎません。
年収の壁の問題についても、小泉氏は「物価や賃金の上昇に合わせて基礎控除等を調整する」と述べています。
しかし、これは過去にも行われてきた小幅な修正であって、国民民主党などが主張する「最低賃金の上昇率に合わせた引き上げ」とは根本的に異なります。
最低賃金の上昇に見合う水準こそが、178万円なのです。
要するに、小泉氏の公約は大規模な財政措置を伴う改革ではなく、既存の枠組みの中での小規模な調整にとどまります。
耳ざわりのよい言葉で飾られていますが、その実態は緊縮財政であり、決して経済回復にはつながらない。
これは総裁選に臨む政治家が、党員や国民に『期待感』を与えるためのレトリックにすぎません。
自民党員の皆さん、どうか騙されないでいただきたい。