ゴールドマン・サックスが銀行免許を取得したことの意味

ゴールドマン・サックスが銀行免許を取得したことの意味

去る7月7日、ゴールドマン・サックス(ゴールドマン・サックス・バンクUSA東京支店)が我が国において銀行業の営業免許を取得したのをご存知でしょうか。

まさに、銀行が非上場企業の株式を100%取得できるようにする「銀行法改正」がなされた直後のことです。

ゴールドマン・サックスは2019年10月の段階で免許申請を行っていましたので、すでにその前年ごろから「将来的には銀行法を改正し、民間銀行が非上場企業の株式を100%取得できるようにする」という流れができていたのでしょう。

そこで「M&Aでボロ儲けしてやろう」というハゲタカ外資が日本の銀行免許を求め、それにお墨付きを与えたということです。

ご承知のとおり、ゴールドマン・サックスはデイビッド・アトキンソン氏がアナリストとして属していた会社です。

そのアトキンソン氏が、菅内閣のなかで「中小企業改革」の旗振り役になっているのですから実に露骨な話です。

さらに困ったことに、日本の中小企業経営の多くが事業承継問題や相続税問題などを抱えていることからハゲタカ資本の格好の餌食になりそうです。

菅内閣の銀行法改正につづく流れというのは、安倍前内閣時代に策定された『2020成長戦略フェローアップ』において明確にされていました。

その後(昨年9月)直ちに金融審議会に「銀行法改正について」が諮問され、なんとその3ヶ月後には答申が示されるという素早さでした。

しかも答申される前から既に銀行法改正の作業が進められていたという。

今後は、銀行から借り入れをしている中小企業が経営難に追い込まれた場合、銀行はその中小企業の借金を株式にスワップして(株式を100%取得して)経営権を握り、不採算部門や非採算部門を切り捨てM&Aを進めることが可能になります。

その結果、企業が将来の世の中のためになるような長期投資や研究開発を疎かにする風潮が生まれそうです。

例えば大企業は研究開発への投資を怠り「技術は中小企業から買えばいい」となるでしょうし、逆に中小企業側は短期に目立つような技術だけを開発し、それに成功すれば会社ごと大企業に売り飛ばして創業者利益を最大化しよう、というように。

とりわけ、株主から四半期利益の拡大を求められる大企業にとっては実に都合がいい。

長期的な投資を怠りつづければ技術力は必ず衰退します。

技術力は一国の経済の源であることを、菅内閣はご存じないようです。