8月21日、ガソリン税の暫定税率廃止をめぐり、与野党6党による3回目の協議が行われました。
前回は各党が財源案を持ち寄ることで合意していましたが、今回も議論は平行線を辿り、次回28日に再度協議することとなりました。
政府は既に「軽油や重油も引き下げれば年度内に約6,000億円の財源が不足する」と試算を示しており、減税には新たな財源が不可欠だと主張しています。
自民党税調会長の宮沢洋一氏も「暫定税率分の財源を提示していただきたい」と述べ、減税に慎重な姿勢を示し、財源論で防衛線を築いていました。
結局のところ、老朽化が進む道路や上下水道の維持・補修のため、新税創設の検討に入る方針が示されています。
国民にとって看過できない事態です。
自動車利用者から徴収する案が有力とされ、年末に向けて具体化が進む見通しです。新税は旧暫定税率に代わる財源とみられており、野党の協力も必要とされています。
しかし、これまでも述べてきたように「減税には財源が必要」という前提そのものが誤りです。
政府の支出は自ら貨幣を創造することで行われ、事前に税収や国債発行を確保する必要はありません。
支出が先で税収は後です。
税はインフレ抑制のための装置にすぎず、財源確保の手段ではないのです。
これは銀行の貸出が預金を生み出す仕組みと同じ構造です。
もちろん、無制限の支出は物価上昇を招きますが、今の日本はコストプッシュ型インフレ下で実質賃金が低迷し、景気は弱っています。
この状況で減税に「財源不足」を持ち出すのは、渇いた畑を前にしながら水桶を閉ざしてしまう愚行です。
政府は企業や家庭とは異なり、通貨の供給主体です。
借金を完済する必要もなければ、資金を蓄える必要もありません。
政府が国債を発行すれば、その分だけ国民の純資産が増えます。
政府の役割は国民を豊かにすることであり、国民の黒字と資産を増やすことこそ本来の使命です。
にもかかわらず、日本政府は「2026年度PB黒字化」を目指して国債発行を抑制してきました。
政府が黒字化すれば、その裏で国民が赤字化し、経済は疲弊します。
それでもなお、わずか1兆円規模の暫定税率廃止の財源に新税を検討するのは、本末転倒です。
本当にインフラ整備の財源を確保したいなら、ガソリン税を特別会計に戻せば済む話です。
新税を導入しても一般財源に回され、結局は国債償還に充てられるだけでしょう。
国土強靱化を進めたいなら、唯一の財源は建設国債です。
暫定税率廃止を口実に新税導入を狙うのが、いまの政府と財務官僚であり、それに追随する与党政治家たちです。
この状況を改めるには、正しい貨幣観をもつ国民が声を上げるしかありません。