参議院選挙において、神奈川県選挙区から立候補している候補者の一人が、「もし帝國憲法に復元すれば徴兵制が復活する」との趣旨の発言をしておられますが、これは歴史的事実や法理に対する理解を著しく欠いた見解であると申し上げざるを得ません。
帝國憲法第20条には、「日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス」と規定されています。
これは、国家の独立と安全を維持するうえで国民が等しく負うべき国防の義務を明示したものであり、決して徴兵制を直ちに意味するものではありません。
現代の民主国家においても、国防の義務は当然の責務とされており、この条文の趣旨は今日的観点から見ても特段異論のあるものではないはずです。
兵役の制度設計については、「法律ノ定ムル所ニ従ヒ」という留保が明確に記されており、選択徴兵制、あるいは自由志願制といった具体的な形態は立法府の判断に委ねられています。
つまり、憲法が直ちに徴兵制を命じているわけではなく、その運用は時代状況や社会的合意に基づいて法律によって定められるのです。
一部の学者は、「法律の留保を法律で定めることによって憲法保障が形骸化する」と批判していますが、その論理は自己矛盾に満ちています。
実際、現行憲法にはこのような法律の留保規定が存在しないため、抽象的な憲法規定を基に、直ちに違憲論が展開される傾向にあり、その結果、司法判断が抑制的となって実質的な憲法保障が機能していない現状があります。
私は立憲主義の立場から、帝國憲法を復元し、現行憲法(占領憲法)を無効とした上で、正統な憲法改正を行うべきだと考えています。
この見解は、私が市議会や各種媒体において幾度も表明してきたものであり、国家のあり方を考えるうえで決して看過できない重要な論点です。
現行憲法は、我が国が連合国の占領下にあった時期に、占領国の主導によって制定されたものです。
これは、ハーグ陸戦法規に照らしても明らかに国際法違反であり、また帝國憲法において憲法改正の発議権を天皇に限るとする第73条、および国家の非常時における憲法改正と典範改正を禁ずる趣旨の第75条にも反しています。
従って、現行憲法は帝國憲法に照らしても憲法としての正統性を持っていません。
我が国は、帝國憲法第13条の定める講和大権に基づきポツダム宣言を受諾し、降伏文書に調印し、占領政策を受け入れました。
さらに同様の大権に基づき講和条約を締結し、主権を回復しました。
一方の現行憲法には交戦権が明文上否定されており、この憲法に基づいて主権を回復したとは到底言えません。
帝國憲法が継続して存在していたからこそ、日本は主権国家として独立を果たすことができたのです。
したがって、講和条約が発効した時点において、帝國憲法の正統性を回復させ、現行憲法の無効を宣言し、改めて憲法改正を行うことが本来なされるべき道筋でした。
しかし、戦後の国政を主導してきた敗戦利得者たちの利害がそれを阻んできたという現実は、我が国の戦後史における最大の悲劇の一つであります。
そもそも、現行憲法が無効とされない限り、我が国が真に独立した国家であるとは言い難い状況にあります。
講和条約発効後も、旧日米安保条約を通じて米国による事実上の支配は継続されており、その後の条約改定を通じて今日に至るまで占領政策は実質的に継続しているのです。
その影響は経済政策にも色濃く表れております。
現在の深刻なコメ不足も、戦後に米国と締結させられたMSA協定(相互防衛援助協定)に端を発する減反政策に起因しています。
日本は戦前まで長期保存に適した籾米の備蓄体制を有していましたが、戦後は米国の意向により、数年で劣化する玄米備蓄に転換され、我が国の食糧安全保障は著しく損なわれました。
また、我が国の土地が相互主義に反して、敵性国家の国民によって買収され続けている背景には、GATS協定(サービス貿易に関する一般協定)の存在があります。
現行憲法第98条第1項は、国内法よりも条約を優先する旨を規定しており、この条項の存在により、我が国が自主的に農業やエネルギーの自給体制を構築することは著しく困難となっています。
以上の諸点を踏まえるとき、現行憲法が無効であることを明確にし、帝國憲法を正統に復元したうえで、真に主権国家としての新たな憲法改正を行うことこそ、我が国が直面する諸課題の根本的解決への第一歩であると確信します。