トランプ米大統領は去る10日、主要な貿易相手国・地域に対し、15%または20%の関税を一律に課す意向を示しました。
大統領は、「20%か15%のいずれか、残りの国はすべて支払うことになると伝えるだけだ。これから決める」と語り、従来の関税政策を見直す方針を明確にしています。
今年4月に米国が示していた「一律10%」の関税方針は、7月7日をもって新たな段階に入りました。
日本や韓国など14カ国に対し、相互関税の見直しを通知する書簡が送付され、8月1日からの適用が予定されています。
中でも日本に対する25%という関税率は突出しており、その背景には、わが国の消費税制度が深く関係していると考えられます。
日本の消費税は、欧州の付加価値税と同様の仕組みを持ち、実質的には輸出企業への巨額の補助金であると同時に、輸入品やサービスには10%の税負担を課すことで、関税に等しい効果をもたらしています。
この「輸出補助金」は年間でおよそ9兆円に上るとされ、しかもその財源は、政府ではなく国民(事業者や消費者)の負担によって成り立っている点にこそ、消費税制度の本質があります。
つまり、国民の負担によって、政府は財政収支(いわゆるプライマリー・バランス)を悪化させることなく輸出支援策を実現できるのです。
このような仕組みは、まさに政府にとって都合のよい税制度といえます。
さらに、仕向地課税主義に基づき、輸入品にも国内での消費と同様に課税されるため、輸入に対する「非関税的な障壁」としても機能しているわけです。
欧州諸国においても同様の税制が採用されており、とりわけ1954年にフランスの財務官僚モーリス・ローレが導入した「付加価値税」は、自動車大手ルノー社を支援する目的で、いわゆる「輸出戻し税」を合法的に制度化するものでした。
本来、WTO協定では輸出補助金は禁じられていますが、付加価値税の導入によってそれを迂回し、制度として正当化したのです。
この世界的なネットワークから米国だけが外れているため、米国側から見れば、「日本も欧州諸国も輸出企業に補助金を出し、しかも米国からの輸入品に課税している…」という不公平な構図が浮かび上がってくるわけです。
したがって、トランプ大統領が日本の消費税を「実質的な輸出補助金であり関税でもある」と批判するのは、ある意味で理にかなっており、だからこそ高率の関税措置に踏み切ったとも考えられるのです。
仮に日本政府が、消費税の減税や見直しによって柔軟な対応をしていれば、ここまで過激な措置に至らなかった可能性もあります。
ところが残念なことに、おそらくは石破総理も赤澤経済再生担当大臣も、消費税が「輸出補助金」であり「輸入関税」としても機能している事実を、十分に理解されていない可能性があります。
そうである以上、米国との交渉は成り立つはずもありません。
仮に石破総理や赤澤経済相がトランプ大統領に対して、「日本は消費税を廃止する方針だ」と明言したならば、日本に対する関税は大幅に引き下げられるかもしれません。
もっとも、与党幹事長が「消費税を守り抜く」と公言している状況に鑑みれば、それは現実的に望み薄といえましょう。
現在、参議院選挙が行われていますが、消費税の本質を正しく捉え、その制度的矛盾を真正面から問い直そうとする政党や候補者は、極めて稀であると言わざるを得ません。