私が暮らす川崎市多摩区と、隣接する麻生区は、ともに川崎市北部医療圏に属しています。
その麻生区にある麻生総合病院の看護師が、入院患者のクレジットカード情報を無断で撮影・不正使用し、ネットショッピングや宅配注文などで約200万円を詐取していたとして逮捕されました。
被害者はすでに亡くなっている80代の男性患者であり、事件の悪質性とともに、地域医療への信頼を根底から揺るがす極めて深刻な事態となりました。
警視庁の発表によれば、当該看護師は「借金があり生活に困っていた。アイドルグッズが欲しかった」と供述しており、患者が不在中の病室に置かれたカードを撮影して情報を不正に取得したとされています。
しかも、他の複数の患者のカード情報についても不正利用の疑いが持たれているとのことであり、本件は個人情報保護のみならず、医療機関における倫理体制や監督機能がいかに脆弱であるかを如実に浮き彫りにした事案です。
医療機関は、単に医療を提供する場所ではなく、患者の命と尊厳、そして生活全般にかかわる極めて高い倫理性が求められる場です。
とりわけ看護師は、患者の最も近くに寄り添い、信頼を根幹としたケアを担う職責にあります。
その看護師がこのような犯行に及んだという事実は、病院内のガバナンスやコンプライアンスが本当に機能しているかどうかを、いま一度問い直さなければなりません。
しかも、私が市議会において繰り返し問題提起してきた新百合ヶ丘総合病院の「3次救急医療機関指定」への道を阻んできた主要な反対者の一人が、この麻生総合病院の院長であるという事実には、改めて注目せざるを得ません。
令和3年度の『川崎地域地域医療構想調整会議』では、「人材不足」や「2次救急の体制崩壊」などの理由が示され、新百合ヶ丘総合病院の3次救急化に対して否定的な意見が多数を占めました。
しかしながら、新百合ヶ丘総合病院は自前で人材を確保し、すでに3次救急の医療体制を整えており、市民からも強い要望が寄せられている施設です。
3次救急の新設が2次救急を阻害するという主張は、患者不在の論理であり、実際には「近隣の競合医療機関の機能強化への懸念」という、一部の医療機関の利害に基づく自己都合にすぎません。
今回の事件が突きつけたのは、地域医療において「数」ではなく「質」こそが厳しく問われているという現実です。
病床数や診療科の多さを競う前に、患者の命と尊厳を守る体制、そしてガバナンスやコンプライアンスが真に機能しているかを精査することが、いま求められています。
私は川崎市議会議員として、これまで一貫して地域医療の質と公平性、そして将来を見据えた体制整備を訴えてまいりました。
今般の事件を受け、単なる一病院の不祥事として済ませるのではなく、川崎市全体の医療行政、ひいては市民の命を預かる責任ある医療制度の構築に向け、改めて行政の主体性とリーダーシップを強く求めたいと思います。
また、医療現場における情報管理の甘さ、内部統制の緩さ、そして倫理の崩壊が明らかになった今回の事件を二度と繰り返さぬためにも、医療従事者の適正な採用と継続的な倫理教育、情報管理体制の強化は待ったなしです。
川崎市議会議員として、今後とも、行政への監視と政策提言を通じて、市民の命と地域医療への信頼を守り抜くため、全力を尽くしてまいります。