本日より、第27回参議院議員選挙がはじまります。
「選挙の争点」とは、本来、メディアが一方的に決めるものではなく、政党・候補者が提示し、有権者である国民が自らの意思で選び取るべきものです。
各党の公約を概観すると、今回の選挙における主要な争点は、概ね次の点に集約されるように思われます。
内政的には、物価の高止まりを背景とした、経済・財政政策の在り方です。
なかでも、消費税の是非を含む税制改革は、最大の論点の一つに位置付けられています。
外政的には、混迷を深める国際情勢や高まる地政学的リスクに対し、いかに対応していくのかという安全保障政策です。
そして何より、与党が参議院で過半数の議席を維持できるか否かという、政局の行方が注目されます。
加えて、選択的夫婦別姓に象徴されるリベラル系の政策についても、その是非を含めて、この機会に徹底的な議論をしてほしい。
むろん、正しい知識を前提に…
経済政策については、与党(自民・公明)は主に「給付金」を軸にした対策を打ち出しています。
一方、野党各党は消費税の減税や廃止を訴えており、その中身にも違いが見られます。
たとえば、国民民主党は、消費税率を恒久的に5%へ引き下げると明記しています。
立憲民主党は、中低所得者層向けに「給付付き税額控除」を導入しつつ、食料品等の税率を一時的に0%とする時限措置を提案。
れいわ新選組は、消費税そのものとインボイス制度の廃止を主張しています。
こうした中、石破内閣は物価高対策として、一律2万円の現金給付を公約に盛り込んでいます。
しかしながら、これが本当に「物価高対策」と呼べるのか、はなはだ疑問です。
物価を抑える方法は原理的に二つしかありません。
「物価そのものを下げる」か、「物価の上昇率を抑える」かです。
2万円を給付することで物価が下がるとは到底考え難く、むしろ需要の刺激によって、一部の物価が上昇する可能性すらあります。
もし本気で物価を下げたいのであれば、もっとも確実な手段は消費税の減税、あるいは廃止です。
そもそも、財務省自身が「消費税は100%価格に転嫁されている」と明言している以上、税率を引き下げれば確実に物価は下がるはずです。
しかしながら、立憲民主党や日本維新の会が主張している「食品消費税率0%」といった限定的な税率措置には、別の問題があります。
一見すると庶民救済のように見えるこの政策も、実施されればいずれ恒久化される可能性が高く、制度のひずみを生み出します。
なぜなら、食品消費税率が0%になると、「食品戻し税」という形で食品企業に消費税が還付される構造が生まれるからです。
これは、現在の「輸出戻し税(消費税の輸出企業への還付)」と同様の仕組みです。
その結果、最も恩恵を受けるのは大手食品メーカーとなり、制度の恩恵を受ける企業があれば、その制度は政治的に廃止しづらくなります。
やがては、「食品の税率をゼロにする代償として、他品目の税率を20%へ引き上げる」といった議論が現実味を帯びてくるおそれがあります。
なお、今回の選挙では、自公与党が改選議席だけでなく、非改選議席を含めて過半数(計50議席)を維持できるかが最大の焦点となります。
しかし仮に過半数を割っても、石破総理が退陣するとは限りません。
というのも、昨年の衆議院選挙でも、石破氏は自身が定めた勝敗ラインを下回りながら続投しており、前例としての既成事実があります。
また、公明党の斉藤代表は、たとえ過半数割れでも石破政権を支持する姿勢を示しており、両者の連携は盤石です。
最大の懸念材料は、自公が過半数を失った場合に、立憲民主党との「大連立政権」が現実味を帯びることです。
もし自民・公明・立憲の三党による大連立が組まれれば、その結果として消費税が恒久化される恐れがきわめて高くなります。
消費税の恒久化を既成事実とするような政治の流れを、今ここで食い止めなければなりません。
今回の選挙は、その最終ラインかもしれない。