政府の赤字こそが民間の黒字をつくる

政府の赤字こそが民間の黒字をつくる

政府、民間、海外、それぞれの経済主体の資金過不足をすべて足し合わせると、必ずゼロになります。

これは誰も否定することのできない物理的事実です。

もしも政府部門が100兆円の赤字(資金不足)、そして海外部門が資金不足(経常収支の黒字)であったとすれば、民間部門は必ず黒字(資金過剰)になります。

恒等式は次のとおりです。

政府収支 + 民間収支 + 経常収支 = 0

なので、デフレ突入以降の我が国経済は常に…

民間収支(黒字) = 政府収支(赤字) + 経常収支の黒字(海外部門の赤字)

…という状況が続いています。

なぜかこれを主流派経済学は、民間の貯蓄(黒字)が政府債務(政府収支の赤字)を支えているという歪んだ解釈をします。

むろん明らかな間違いです。

事実は、民間の黒字が政府の赤字を支えているのではなく、政府の赤字が民間の黒字を創出しています。

なぜなら一国の経済は、政府による支出が先行するからです。(スペンディング・ファースト)

そして年度末、その年の経済活動の中で創出されたGDPの中から政府は税率分の租税を徴収します。

つまり年度末まで収入のない政府は、常に赤字が先行します。

とりわけ、ここで極めて重要な事実は、政府は最終的に支出以上の徴税をしていないということです。

これを財政赤字といいます。

因みに、MMT(現代貨幣理論)の代表的論者であるL・ランダル・レイは「財政赤字こそが正常な状態である」と言っています。

さらにレイは「政府が政策的に財政赤字の削減を目指すことは望ましいだけでなく、ほとんど不可能である」とも言っています。

一方、当然のことながら、政府が財政赤字の削減、即ち黒字化を目指さなければならないときもあります。

例えば、バブル経済のときのように、インフレ率が高水準を維持し、金融機関の貸出が増えて過ぎているときです。

ゆえに政府はインフレ率やインフレ率や金利や雇用状況をみながら財政政策を判断しなければならず、そこに「財政は常に健全(収支均衡)でなければならない」という政策判断はあり得ません。

今の日本は、インフレ率(コアコアCPI)も長期金利もゼロ%にあり、雇用環境は完全雇用まではほど遠い経済情勢のなかにあります。

なのに我が国の政府はプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標を未だに堅持し、政府歳出を抑制しています。

そのうえ、政策担当者や政治家たちの多くが「いまは民間の貯蓄があるからいいけれど、やがてそれが尽きたら政府は破綻するぅ~」という無知をさらけ出して恥じることを知りません。

何度でも言います。

民間の貯蓄が政府の赤字を支えているのではありません。

政府の赤字が民間の貯蓄を創出しています。

冒頭のグラフ(各経済主体の資金過不足)は、民間部門の黒字(資金過剰)が政府部門と海外部門の赤字(資金不足)の上に成り立っていることを示しています。