現代貨幣理論(Modern Monetary Theory、以下MMT)は、その名前のとおり「現代の貨幣」の現実を体系的に論じたものです。
よく「私はMMTに賛成する」とか、「MMTには賛成できない部分がある」とかいう人たちがおられますが、どちらもおかしい。
なぜなら、MMTそのものは政策でもなんでもなく、ただ単に「現代における貨幣とは、こういうものですよ」と事実を説明しているにすぎないからです。
例えて言うなら、MMTに賛成するしないというのは、アイザック・ニュートンの「万有引力の法則」に賛成するしないと言っているに等しい。
ニュートンが「引力とはこういうものですよ」と事実を説明しているのと同じように、MMTもまた「(現代の)貨幣とはこういうものですよ」と事実を説明しているだけです。
MMTが説明する事実とは、次の三つです。
①自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない
②全ての経済は、生産と需要について実物的あるいは環境的な制約がある
③政府の赤字は、その他の経済主体の黒字である
まず、わが国の政府が発行する国債は100%が自国通貨(日本円)建てです。
日本円を発行できる政府が、日本円を返済できなくなって破綻することなどあり得ない、といっています。
私たち日本国民のお財布の中に入っているおカネ(日銀券)は、日本銀行(中央銀行)という政府の子会社が発行しています。
よって、財源確保のために、親会社である政府がわざわざ国民のお財布からおカネ(日銀券)を巻き上げる(回収する)必要などありません。
国債の発行を通じて日銀に新たに発行されればいいだけです。
あまりにも市中におカネが出回り溢れ過ぎてしまった時こそ、利上げや増税を行うことで回収すればいい。
要するに、自国通貨を持つ政府の通貨発行量に制約はありません。
しかしながら、例え政府の通貨発行に制約が無くとも、供給能力が不足すればインフレ率は限界に達します。
すなわち、よくMMT批判者が言う「MMTは、政府は無制限に借金ができるなどと言っているぅ〜」というのは全くの見当違いで、「例え自国通貨を持つ政府であっても、通貨発行量は実物賦存量に制約される」と、ちゃんとMMTは述べています。
③の「誰かの赤字は、誰かの黒字」は、地球上に住んでいるかぎり、けっして逃れることのできない法則です。
つまり、行政の赤字は国民(市民)の黒字なのに、行政の赤字を減らそうとする、もしくは現に減らした首長や議員が国民から広く支持を得ていることは誠に残念です。
MMTが日本に上陸したのは2019年のことで、すでに6年という歳月を経過していますが、まだまだその周知スピードは遅い。