わが国には「日本経済は成熟したから、もう公共事業は要らない…」と主張する人たちがいます。
何をもって「経済の成熟…」と言うのかわかりませんが、例えば2000年の公共事業費を100とした場合、日本は2020年の段階で60の水準にまで減らしています。
一方、米国のそれは240(2000年=100)です。
成熟度なるものがあるとすれば、米国はこの20年間で2.4倍も公共事業費を増やしているのに対し、日本が4割も減らしていることをどう説明するのでしょうか。
「米国経済は日本経済よりも成熟していないから当然だ…」とでも言うのでしょうか。
だとすれば、成熟とはいったい何なのでしょうか。
そうすると今度は「米国と異なり、日本は人口が減るから公共事業は要らない」と言い訳するにちがいない。
だが、この批判もまた当たらない。
なぜなら公共事業は、経済競争の道具であり武器であるインフラを構築しメンテナンスするために行われるものです。
経済競争とは生産性向上の競い合いのことですから、もしも人口(生産年齢人口比率)が減るのであれば、なおさらのことインフラの充実度、すなわち公共事業が必要となります。
そもそもインフラが無ければモノやサービスを生産することさえできません。
その生産性を高めるなら、インフラの充実は必須です。
例えば、その国では1時間でどれだけの距離を移動できるか、という交通インフラの充実度を示す国際比較があります。
正しくは『都市間連絡速度の国際比較』という統計ですが、それによればドイツとフランスは95km/h、イギリスは79km/h、中国は79km/h、韓国は61km/h、日本は59km/hで、わが国は既に韓国にさえ抜かれている有り様です。
公共事業否定派は「韓国経済のほうが日本経済よりも成熟している…」とでも言うのでしょうか。
また、ドイツの人口は8,328万人、イギリスの人口は6,835万人です。
日本よりも人口の少ない先進国が、日本よりも交通インフラを充実させていることをどう説明するのでしょうか。
人口減少であれ、成熟なんちゃらであれ、そんなものはインフラ整備を否定する理由にはならない。
すると今度は例によって「日本には借金がぁ〜」とでも言うのでしょう。
であるならば、世界最大の対外純負債国である米国がこの20年間で2.4倍も公共事業費を増やしたのに対し、世界最大の対外純資産国である日本が20年間で4割も公共事業費を減らしたことをどう説明するのか。
今の日本に、公共事業を不要とする合理的な理由など何一つない。