二期目の大統領選を制したトランプ米大統領は、その選挙中にロシア・ウクライナ戦争について「私が大統領に当選したら、この戦争を1日、24時間以内に終わらせる」と公言していました。
選挙中もずっと、「ウクライナを支援し続けていることが戦争を長期化させている」としてバイデン政権(民主党政権)を厳しく批判していました。
また、ゼレンスキー大統領に対しても、米国から何兆円ものカネを引き出していることに不満を漏らしていました。
大統領就任後すぐに行われたゼレンスキー大統領との会談で、激しい言い合いになっていたのは記憶に新しい。
そんなトランプ大統領でしたが、大統領に就任して100日以上が過ぎたものの、今なお戦争を止めることができないでいます。
というより、歴史的かつ地政学的視点に立てば、この戦争の責任はむしろ欧米側にあると言っていい。
それは私が言っているのでなく、著名な国際政治学者であるジョン・ミアシャイマー氏が言っているのでございます。
欧米メディアの報道、そしてそれをコピペして報道する日本のメディアらの主張によれば、「ウクライナ危機の責任は、プーチン(ロシア)の領土的野心にある…」というものですが、ミアシャイマー氏に言わせれば、「この危機の真犯人は、米国と欧州の同盟国だ」とのこと。
すなわち、欧米がNATOの東方拡大を進め、ついにはウクライナまでをもロシアの影響力から切り離しNATOに統合させるという戦略を採ったことがロシアを大いに刺激した、と言うわけです。
その刺激は「ロシアに行動させるに十分なものであった…」と。
ちなみに、ミアシャイマー氏は1990年代から既にロシア・ウクライナ戦争を予見していた数少ない国際政治学者です。
ミアシャイマー氏の論文を読むと、テレビコメンテーターとして登場する日本の国際政治学者たちとのレベルの違いを感じます。
結論から言うと、ミアシャイマー氏は「この危機を解決するためには、ウクライナを緩衝地帯にしておくこと以外にない」としています。
要するに、ゼレンスキー大統領がウクライナのNATO加盟に固執するかぎりロシアは戦争を止めるわけにはいかないであろう、ということでしょう。
ミアシャイマー氏は次のようにも言っています。
「ウクライナは、かつてナポレオン時代のフランス、帝政時代のドイツ、ナチス・ドイツがロシアを攻撃するために通過した広大な平地に位置している。そのため、ウクライナはロシアにとって戦略的に非常に重要な緩衝地帯なのだ…」と。
なるほど、もしも中国がカナダとメキシコと軍事同盟を結んだ場合、当然のことながら安全保障上の脅威から米国は黙っておらず、やがてはなんらかの武力行使(戦争)に踏み切ることになるでしょう。
自分がやられたら嫌なことを、他人様にやってはいけない。
わが国を含め、いずれの国も地政学的な宿命をもっており、その国の行動を決定づけるものは常に地理であることを念頭に国際政治を見なければなりません。
さて、昨日の報道によれば、プーチン大統領が前提条件なしでの直接対話の再開をウクライナに提案しはじめました。
それに対してゼレンスキー大統領は、その前にまず「停戦」が直接対話の条件だ、としています。
そろそろ腹を括らねばならないのは、ゼレンスキー大統領の方だと思うのですが…