現在のコメ不足の根源的要因は、政府(自民党政権)が人為的に供給能力を毀損してきたことに尽きます。
いつも言うように、日本ほど農家を保護しない国はなく、このままでは(遅くとも10年後には)、わが国はコメを生産できない国に成り果ててしまうかもしれません。
大東亜戦争終結直後の日本がそうだったように、やはり世界大戦の戦場となってしまった欧州においても穀倉地帯が焼け野原となり食料不足に陥りました。
そこで米国は、国内で生産した小麦を大量に日本や欧州に輸出することになります。
戦時中、穀物の生産性向上に力を入れてきた米国では、戦争が終わったことで国内の小麦が有り余っていたからです。
有り余った小麦を大西洋を越えて欧州へ、太平洋を越えて日本へと輸送したわけですが、もちろんながら、それによって食糧難にあった日本も欧州も大いに救われたことは間違いありません。
その後、日本においても欧州においても経済復興が進み、徐々に穀物の生産量が回復していきます。
それに伴い小麦の国際価格が下がっていったために、米国の小麦農家の収益が圧迫されるようになりました。
「このままでは小麦を作り続けることは難しい…」と、廃業を考える小麦農家が増えていったわけです。
国内の小麦農家が大量に廃業してしまうと、戦略物資たる穀物の自給率が低下することになります。
それを恐れた米国政府は、小麦農家に対し「価格補償」を行うことになりました。
価格補償とは、小麦農家が生産維持可能な販売価格と市場価格との差額を米国政府が財政を投じて補償するということです。
生産者価格の保護を受けた穀物が外国に輸出されているわけですから、これは完全なる「輸出補助金」です。
本来はWTO協定に反する行為のはずですが、米国政府は「国内生産の農家に対しても行っていることだからWTO協定には反しない」という詭弁を弄して悪びれない。
一方、欧州では、価格補償ではなく農家の所得を直接的に補償する「所得補償」を行って農家を保護しています。
例えばイギリスやフランスでは、農家の所得の90%以上は公費で賄われているため、ほぼ公務員です。
農家を守らない先進国は日本ぐらいなのです。
すると、お約束のように新自由主義者たちは必ず「そのような保護をしたら競争力が働かず農業が衰退してしまう」と的外れな批判をしてきます。
事実を見よ。
価格保障や所得補償などの保護を受けている欧米の農家に、保護をされていない日本の農家は完全に負けているではないか。
もしも日本でも所得補償や価格補償を行えば、日本の農業生産量は必ず増え、農家を継ぐ若者も増えていくことになると思います。
現在、わが国のコメ農家の平均年齢は70歳を超えていますが、それでも儲からぬコメ作りを辛抱強く続けてくださっているのは、ひとえに日本の食糧安全保障を担っているという責任感からです。
そのような人たちが「どうせ政府の補助があるから、これ以上は仕事しなくても…」などと考えるわけがありません。
繰り返します。
このままでは(遅くとも10年後には)、わが国はコメを生産できない国になってしまいます。
そうなれば、米国様から送られてくる遺伝子組換米を食さなければ生きていけないという状況に陥るのです。
その時になって「コメの自給力を…」などと叫んだところで、時すでに遅しです。