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軍事外交のレジティマシー

軍事外交のレジティマシー

イラン革命防衛隊のカセニ・スレイマニ司令官を米国がドローン攻撃によって殺害し、その報復として今度はイランが駐イラク米軍基地に数十発の弾道ミサイルを打ち込みました。

数十発の弾道ミサイルによる報復とはいうものの、ミサイルの着弾地点を選び米軍側に死者を出していないあたり、イラン側の戦略的配慮が伺われます。

「本気で戦争する気はないけれど、少しぐらい報復の形をとらせてほしい…」というイランのメッセージなのかもしれない。

ひょっとすると米国側もその意を汲んだのか、トランプ米大統領は「経済制裁」を表明したものの更なる軍事的な報復措置はとっていない。

さて、当初、トランプ米大統領は、ソレイマニ司令官の殺害について「スレイマニは米国の外交官や軍関係者に対して、差し迫った邪悪な攻撃を画策していたが、我々はその証拠を掴み、必要な行動をとった」との声明を出していました。

即ち、「あれは自衛の措置だった」と。

しかしながら『Newsweek』によれば、トランプ米大統領が言うのような「差し迫った攻撃」など現実には存在しなかったらしい。

スレイマニ殺害は最初、自衛策としてではなく、12月27日にイラクの米軍基地に対する攻撃で米国人の請負業者1人が殺されことへの「報復」としてトランプ米大統領に提案されたという。

この時、トランプ米大統領はそれを選ばず、イランが支援するイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの拠点をドローン攻撃するというより穏やかな選択肢だったようです。

ところがその後、トランプ米大統領は「スレイマニ司令官殺害」という策を選びました。

その理由をニューヨーク・タイムズ紙は次のように報じています。

「(トランプ米大統領がソレイマニ司令官殺害を決断したのは)12月31日に在イラク米大使館がイランの支援を受けた武装組織によって攻撃されたのをテレビで見て激怒したからだ」

即ち、オバマ前政権時代にリビア東部のベンガジで起きた米領事館襲撃事件を彷彿とさせる映像が米国を弱く見せ、今度の大統領選にも響くことを恐れたのではないか、という。

これらの報道が仮に正しいとすれば、米国によるソレイマニ司令会の殺害は、少なくとも「自衛」ではなく「報復」だった、ということになります。

自衛と報復では、軍事行動のレジティマシーが全く異なります。

イランは、かつてフセインが支配したイラクなどとは異なり、ペルシャ帝国として長い歴史を持った中東の大国です。

イラク戦争とリーマン・ショックによって覇権国としての力を相対的に失っている今の米国では、フセインをやっつけたときのように簡単には始末できない。

もしも米国がイランとの戦争を本格的にはじめれば必ず泥沼状態となり、米国は中東とヨーロッパに対する支配力を失うことになるでしょう。

ベトナム戦争の際、米国には「共産主義化を食い止める」というレジティマシーがありましたが、それでも米国は泥沼化した戦争に苦しみました。

「選挙対策のためにトランプがはじめてしまった戦争…」では、レジティマシーもヘッタクレもない。

むろん米国世論の支持も得られいでしょう。

事態を打開するために、あるいは面目を保つために、新たなリスクを高めるようなことにならなければよいのですが。
2020/01/10

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