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マネタリストの死

貨幣乗数

1970年代後半、シカゴ大学の経済学者ロバート・ルーカスが、とある会議で『ケインズの死』というタイトルで話をしました。

言わでもがな、ケインズとはジョン・メイナード・ケインズのことです。

1973年に第一次オイルショックが勃発して以降、世界経済とりわけ英米経済ではインフレ率が高いにもかかわらず失業率が下がらないという、いわゆる「スタグフレーション」という奇妙な経済現象が生じました。

ケインズは1946年に既にお亡くなりになっていたのですが、この1970年代のスタグフレーションに対し、ケインズ的な政策では対処できなかったことから、ルーカスはそのことをもって「ケインズは死んだ」と述べたわけです。

ただ、断っておかねばなりませんが、ケインズはあくまでもデフレ経済への対処法として「政府支出拡大による有効需要創出の必要性」を示したのであって、それがスタグフレーションにも通用するなどとは言っていません。

さて、1970年代以降、「ケインズは死んだ」という経済学者たちは潜在GDP(国民経済の供給能力)に着目し、「様々な規制緩和により供給能力を引き上げることで経済を成長させるべきだ」という古典派経済学の流れを汲む経済学の一派が勃興していくとになりました。

この一派たちの理論を総称して「新古典派経済学」と言います。

あるいは「新自由主義(ネオリベラリズム)」とも。

新古典派経済学の「中興の祖」となったミルトン・フリードマンなどは、1976年にノーベル経済学賞を受賞するにまで至りました。

そのフリードマンは、1929〜1933年にかけた米国の大恐慌最悪期の金融機関・政府以外が保有する現預金の合計(マネーストック)に着目し、当時のFRB(米国連邦準備制度理事会)による現金紙幣、硬貨、中央銀行の当座預金残高の合計(マネタリーベース)の供給が不十分だったことこそが「大恐慌の原因だ」としました。

要するに彼は「中央銀行はマネタリーベースを調整することでマネーストックを管理することが可能だ」と言ったわけです。

これがいわゆる「マネタリズム」で、この種の経済学的立場を「マネタリスト」と呼びます。

ところが、大恐慌期の米国は、FRBがマネタリーベースを7倍に拡大したにもかかわらず、マネーストックは3倍強しか増えておらず、貨幣乗数(=マネーストック÷マネタリーベース)が3倍を切る水準にまで落ち込んでいました。

結局その後、米国の経済が回復したのは、対日戦争によって政府支出が拡大され有効需要が創出されたからです。

現在の日本では、アベノミクス以降(2013年春以降)、マネタリーベースを480兆円も拡大しました。

しかし、マネーストックは信じがたいほどに300兆円しか増えておらず、貨幣乗数は2を切って1.84という体たらくです。

我が国の貨幣乗数は大恐慌気の米国以上に小さくなっているわけですから、マネタリズムはとっくに死んでいるといっていい。

そして今や、政府支出の拡大により総需要不足を埋めるする以外にデフレを脱却する術がないことは明白となっています。

ゆえに、死んでいるのはケインズではなくマネタリストです。

ケインズは生きている…
2021/03/28

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