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世界のワクチン争奪戦に勝てない理由

国や地域別の100人あたりのワクチン接種回数のトップファイブは…
イスラエル 114.4%
UAE 78.2%
英国 46.8%
米国 39.9%
仏国 14.0%
(3月25日時点)
となっており、日本は未だ0.61%で大きく遅れをとっています。
上のグラフをみますと、イスラエルは既に100%を超えていますが、コロナワクチンの接種は2回打つワクチンが主流ですので数字は200%に近づいていくことになります。
イスラエルがダントツなのは、国民の接種後のデータを製薬会社に提供することを条件にしたことが効いているらしい。
一方で接種がはじまっていない国は、アフリカや南太平洋の島国などの小さな国で、未だ50カ国以上もあります。
さて、自前でワクチンを調達する必要のある日本ですが、グラフをご覧のとおり未だ0.61%で百人あたり一回にも達しておらず、発展途上国の一つバングラデッシュ(3.12%)にも遅れをとっている始末です。
むろん、資金力と国内に生産施設がある国が有利で、ワクチンを生産していない国には厳しいことは解っておりますが、それにしても惨憺たる状況です。
我が国がワクチン争奪戦で不利な状況に追い込まれている最大の理由は、詰まるところ①政府による交渉力の欠如、②ワクチン未生産国であること、の2つに集約されるのではないでしょうか。
むろん、交渉力の欠如はワクチンだけの話ではありませんが、ワクチン未生産国であることもまた政府による開発資金の欠如に由来します。
例えば、米国などは早い段階から研究開発に投資し、リスク承知の投資により供給優先権を得ています。
成功の見通しが立つ前に政府がリスクを承知で投資しているわけです。
前述のイスラエルのように、国内にワクチンメーカーが無くとも、接種後のデータ提供で優先提供を受けてるケースなどは実に革新的です。
我が国は例によって緊縮財政至上主義に陥り、これらの「投資」を抑制してきました。
その上、データ提供など製薬会社に対して積極的な協力もしないのですから、世界のワクチン市場においては結果的に後回しにされても仕方のないことなのでしょう。
次なるパンデミックに備え、我が国においてもモデルナやビオンテックのような企業を国内で育てる必要があると思います。
mRNA技術を用いて短期間でのワクチン開発を実現したモデルナ、そしてビオンテックは、今回のコロナ禍で英雄的な存在となり急成長しています。
しかしながら、これらのテクノロジーは一夜にして完成したのではありません。
言うまでもなく、基礎研究の積み上げの結果です。
重要なのは科学への投資は必ずしも直ぐに製品化にはつながらないということを理解すべきです。
米国の国立衛生研究所などは特にモデルナのmRNAの研究を長年支援し続けてきたようですが、製品化するまでに何年も時間を要したという。
即ち、早い段階から政府の資金が必要だと言うことです。
加えて、企業にとっては成長する過程でリスクを共有する投資家の存在も必要です。
例えばモデルナには、数十億の民間投資があり、上場前の投資額は市場最大を記録し、バイオテック企業としては最大のIPO(新規株式公開)を果たしたという。
まだ2〜3年前の話ですが、当時の時価総額は75億ドルで、それだけでも充分に巨額ですが今や575億ドルの価値があるという。
早い段階でモデルナの成功に賭けた投資家には幸運な結果となったわけです。
結論としては、我が国は早急に次の3つを改善しなければならない。
①政府による開発資金の欠如
②厚労省の硬直的なワクチンの承認体制
③医療ベンチャー育成のための官民の関心不足
そして忘れてはならないのは人材の育成です。
例えばCVO(チーフ・ワクチン・オフィサー)等のポストを創設し、こうしたポストにより大臣や社長を支えつつ、対外交渉に強い人材をも支える体制を構築していくべきだと思います。
2021/03/27 |